医療が届かずに困っている人に必要な医療につながってもらうには、まず認知症の一般的な症状や受診の有用性を取り上げておくべきだったと反省しています。よって今回は、詳細にとはできませんが、上記について少しご紹介しながら医療につながることの意義について考えてみたいと思います。
まず認知症の症状を整理する場合、一つの見方として(1)中核症状と(2)周辺症状というように分けられることがあります。(1)中核症状とは、脳萎縮などの変化によって直接的に引き起こされる機能的な障害を指します。代表的な例としては、話すことにたどたどしさがみられるようになったり、記憶力や理解力の低下などが挙げられます(詳細は割愛させていただきますが、インターネットに見やすくまとめられていました。厚労省は情報量が多そうでしたのでこちらを。参考引用1)。
一方、(2)周辺症状は、ベースとして中核症状のような障害が存在する人に、生活環境での出来事が影響することで間接的に引き起こされる症状を表します。専門的にはBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)とも呼ばれます。BPSDが指す症状は実に幅広く、一人歩きや拒絶、興奮、暴言・暴力といった行動上の症状に加えて、不安やうつ状態、幻覚・妄想といった精神的な症状が含まれます(同じく参考まで。引用2)。
いずれの症状も、本人およびご家族など周囲の支援者にとって不安を与えるきっかけとなりうる点で共通しますが、ご家族が困り果てて何とか受診に至るようなケースで、受診のきっかけとなるのは、BPSDであることが多いように思います。
医療としては、症状の程度によって入院やお薬による治療が必要になる可能性もありますが、すべてのBPSDにそのような対応が必要かというと必ずしもそうではありません。実際、症状が軽微な状態から介入することで、お薬を使わない治療が有効であるとの報告もあります(引用3)。
学会の最新テキスト(引用4)を見てみると、お薬を使わない治療法の例として「記憶の訓練」や「音楽療法」「運動療法」「動物介在療法」といったものが挙げられています。「え?音楽とか運動でいいの?」と思われるかもしれませんが、もちろん専門的な知見に基づいた治療法なので、実施には医師の指導が必要なものになります。