実際、パワハラ報道が出た芸人のネタは笑いづらくなってしまう。こうした事態はせっかくの才能を潰してしまいかねないわけで、最近では所属事務所でもパワハラ講習会を開くなどして対策を講じているようだ。ただ、その実態を把握し、対策をするのはそう簡単ではない。かつて芸能事務所で芸人部門を担当したことのある、お笑い現場評論家のKENJI氏はこう解説する。
「パワハラ問題は、年齢に関係なく芸歴や社歴(所属歴)で発生するもので、事務所としてはなかなか対策のしようがないのが正直なところです。立場が上の芸人に、『あんまり説教するな』っていうのも業界の慣習的に言いづらい。ただ有名なところでは、過去に我が家の杉山さんの酒乱が所属タレントに悪影響を与えると判断されたので、福岡事務所へ移籍という対策が打たれたことがある。一時的に地方に“左遷”させてしまうという方法ですね」
これまで地方への転籍などで解決してきたお笑い界のパワハラだが、TKO木下や友近のように先に告発されてしまうと、事務所側も対策が後手に回ってしまう。
「マネジャーがコロコロ変わるタレントは要注意です。ある女性お笑いタレントは、マネジャーに当たりが強すぎて、これまで何人も替わっています。彼女に付けたマネジャーがすぐに会社を辞めたがるので、事務所もかなり手を焼いているんです。この流れの中で、またやり玉に挙がるかと思うとこちらとしてもヒヤヒヤものですよ」(前出の芸能事務所スタッフ)
前出の元お笑い芸人は「この5年でだいぶ状況は変わったが、まだまだ昔のような職人肌の芸人さんもいっぱいいるので、パワハラ撲滅は難しい」と語っていた。お笑い業界のパワハラ報道はまだまだ出てきそうである。(黒崎さとし)