


都内のとあるオフィスビル。インタビューに用意された部屋は真っ赤なパンツから、ヘビメタ風?のパンツまで、一面パンツだらけだった。記者がおすすめのパンツを尋ねると、目の前にいた男性は5分ほどパンツの山をあさった。何しろ種類が多い。
「これかなー」
そういって差し出されたのは、赤を基調としたローライズなデザインのパンツだった。
「とにかく履き心地が最高なんですよ。私も初めて履いた時は言葉にならないほどの感動でした」
蛍光色の上下スーツに、画家の「ダリ」を思い起こさせる天を向いた長いヒゲを鼻下に蓄えている。そんな姿でパンツへの情熱を語るのは、男性下着メーカー「TOOT(トゥート)」の代表取締役社長、枡野恵也さん(37)だ。
■東大を卒業し、マッキンゼーに入社
枡野さんは新卒でアメリカの大手コンサル会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」に入社した“エリート”。そんな人がなぜ、パンツの山に囲まれているのか。
枡野さんは東京大学法学部出身。周りは官僚や弁護士を目指すのが「既定路線」だった。枡野さんも「世界平和」や「貧困をなくしたい」という夢を掲げ、将来的に国連への就職を視野に、外務省の試験を受けた。
「大学ではバレーボール部に所属していて、部活漬けの毎日。麻雀も大好きで、今思えば勉強なんてろくにしていませんでした。当然、試験はあっさり落ちました」
そんななか、友人が内定を得た「マッキンゼー」に興味を持った。海外企業へのコンサルによる課題解決だけでなく、公的機関とも連携し、社会貢献にも従事している会社だった。加えて世界中に100以上の支社があり、企業としての考え方もグローバル。すぐに興味を持ち、入社試験を受けた。その内容が衝撃だ。
「面接を4回くらいやったんですけど、経歴とか志望動機とかについては一言も質問されないんですよ。そして外資系コンサルティングでは一般的な『フェルミ推定』(実際に調査するのが困難な「量」について問われ、それを理論的に推測して答えを出すこと)を課されました。面接官が部屋に入ってくるなり、いきなり机にあったペットボトルの水を指されて『これ、日本で売り上げいくらあると思う?3分で考えて』と聞かれました。自分の考えを述べると、『なんで?』『じゃあどうしたらいいの?』というツッコミで延々と畳みかけられる感じでした」