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歯ぐきの症状といえば腫れや痛み、と思いがちですが、中には「歯ぐきのかゆみ」「むずがゆさ」を訴える人もいるようです。かゆみの原因は歯周病なのでしょうか? それとも、ほかに原因があるのでしょうか? 『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか? 聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中の歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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歯ぐきは意外に鈍感で、けっこう腫れていても歯ブラシで傷つけたりしない限りは、痛みがほとんど起こりません。
歯周病が「サイレントディジーズ(Silent Disease: 静かなる病気)」と表現されるゆえんもここにあります。
しかし、口の中の感覚が敏感な人は歯周病の兆候として、早い段階から違和感を持つことがあるようです。その一つが「歯ぐきがむずがゆい」という訴えです。
患者さんからこうした訴えを聞くことは歯ぐきの痛みに比べれば断然少ないです。しかし、ネットを見ると、歯ぐきのむずがゆさで困っている人、不安を感じている人はいるようですね。
日本臨床歯周病学会の作成した「歯周病のセルフチェック」の項目の中にも、「歯肉がむずがゆい、痛い」という項目が挙げられており、歯周病のサインの一つであることは間違いありません。
では、なぜ歯周病で歯ぐきがむずがゆくなるのでしょうか。
歯周病の始まりは歯ぐきの炎症です。歯周病菌が歯と歯ぐきのすき間に侵入すると、これを排除しようと血液のうちの白血球とともに細胞が集まり、血管が太くなって腫れてきます。これが歯ぐきの炎症です。この炎症による症状の一つがかゆみなのです。
また、歯周病が進んで歯がグラグラしてきたことが原因で、むずがゆいと感じることもあります。歯がゆれていると歯根と歯槽骨の間にあり、クッションの役割をしている歯根膜が刺激されます。
歯根膜は感覚線維の一つで、ものをかむときの感覚にも影響を与えます。ここに強い力がかかった場合に歯が浮いたような感覚におちいり、これを「むずがゆい」と表現されることもあるのです。