心配される「シャーロック」だが、そこにはフジテレビの複雑な戦略が見て取れるという。
「確かに同局でディーンさんが主演した『モンテ・クリスト伯』の視聴率は悪かったんですが、月9は今や高齢者層を意識した作品が多いんです。昨今の作品をよくよく見てみると、ドラマでは“鉄板”と呼ばれる医者や警察ものの亜流企画が多くなっている。視聴率が2ケタ台に回復したのは、実はそうした流れだという分析もあるのです。特にここ3クールのフジテレビは、“医療”を元に“捜査”をするといった企画が当たってきた。そう考えると、探偵というのもぎりぎり警察モノ・捜査モノで年配層の受けが良いディーンの起用。その上で『シャーロック』は、『モンテ・クリスト伯』や今年の正月特別ドラマ『レ・ミゼラブル』(フジテレビ系)でつくりあげてきた昔話の現代化シリーズの流れも汲んでいます。海外では『シャーロック・ホームズ』の物語を現代化し大ヒットしていますし、フジテレビは海外で人気のドラマ『スーツ』の“日本版”を作り上げてヒットした実績もある。数字が良かっただけにここで新たなチャレンジをしたのかもしれません」(フジテレビ関係者)
一方で、「シャーロック」にはフジテレビ幹部の強い意向が働いているという話もある。
「『シャーロック』はフジテレビ社内でドラマ制作に影響力のある、元敏腕プロデューサーの石原隆取締役の強い意向があるようです。石原さんは月9の立て直しには力を入れ、結果も出している。かつてさまざまな名作ドラマを世に送りだしてきたおり、月9復活の兆しが見えてきたこのタイミングで、かつてのような時代のアイコンとなるドラマを作り出そうとしているのはないでしょうか。また、古典的なテーマの作品を現代風にドラマ化する手法を確立することで、映画や舞台などクロスメディア展開を狙っていくのではないでしょうか」(前出のドラマ制作スタッフ)
ドラマウォッチャーの中村裕一氏は、逆風にあるディーンに期待を寄せる。
「確かに『モンテ・クリスト伯』の視聴率は低調でしたが、その裏でSNSを中心とする反響が凄まじく、同じクールで放送されていた『おっさんずラブ』と肩を並べるほどネットで盛り上がっていました。しかしながら『モンテ~』はなかなかその世界観が受け入れられず、放送開始直後は苦戦していたことも事実です。日本よりも先に台湾でデビューを果たし、海外ドラマにも出演した経験のある彼ですが、あまりにも顔立ちが端正なため、ドラマチックかつダイナミックな展開で“映える”一方で、作品世界にハマらなければ視聴者が違和感を感じてしまうウィークポイントがあるように思います。一度は地に落ちたものの、ここまで良い調子で推移している月9が完全復活なるかは、まさに彼の肩にかかっていると言っても過言ではありません」
不安だらけのドラマだが、裏側ではさまざまな意図が絡み合っているディーン、久しぶりの主演。良作になることを期待したいところだ。(今市新之助)