成人が百日咳にかかった場合、重症化することはめったにありません。しかしながら、ワクチンを接種していない人や、特に生後6カ月未満の乳児が発症すると、重症化しやすいことがわかっています。ときに、無呼吸発作を引き起こし、チアノーゼやけいれんを認め、命を落としてしまうことさえあるのです。約4人に1人が肺炎にかかり、100人に1人がけいれんを起こし、300人に1人が脳症を起こし、100人中1人が死亡しているという報告もあります。

 百日咳は、ワクチンを接種することで予防することが可能です。多くの国では、定期接種の初回接種(小児期)において最低3回の「百日せき含有ワクチン」の接種が行われており、一部の国では3回目から1年以内に1回の追加接種が実施されています。また、初回接種の回数を問わず、就学時前から小学校低学年の時期に追加免疫効果を得るために、1回のブースター接種が行われています。日本でも、生後3カ月からの4回の定期接種と、就学前の追加接種と学童期以降の百日咳予防目的のための接種(11歳から12歳)が任意接種となっています。

 しかしながら、多くの先進国では、百日咳ワクチンの免疫効果が4~12年で弱まることにより、百日咳が青年や成人の間で再度流行することが問題になってきているのです。

 ワシントン州では、2011年半ば以降、百日咳の患者数の大幅な増加が報告されました。2012年6月16日時点で、2011年の同時期の13倍、過去最高の流行を記録した1942年に匹敵する10万人当たり37.5人(2,520例)に達したのです。ワシントン州保健長官は2012年4月3日に百日咳の流行を宣言したほどの流行でした。

 2012年のワシントンでの流行を年齢別にみると、1歳未満と10歳、13歳、14歳の罹患(りかん)率が特に高いことがわかりました。そして、破傷風/ジフテリア/無細胞百日咳ワクチン(Tdapワクチン)を接種した思春期の若者のTdapの防御効果は64%であり、1年以内には73%だったのが2~4年後には34%にまで低下しており、ワクチンの効果は接種から時を経るにつれて低下してしまうことが判明したのでした。

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新生児の抗体レベルを高める対策とは