●開会式直後の試合の苦しさ(栗山巧)

 埼玉西武にはもう1人、大阪のとなり兵庫県神戸市出身の栗山巧がいる。2年時に春夏連続出場を果たしているが、甲子園の魔物は別にいたと言う。

「開会式直後の第1試合で、本当にキツかったのを覚えている。今でこそ開会式でも熱中症対策とかやっていたけど、そんなのはなかった。開会式が始まってから、だんだん気温が上昇するわけです。だから入場行進は元気でも、開会式終わって退場する時はかなりバテている。その状態で試合に入ったから、キツかった」

 栗山も他の選手同様、暑さに対する抵抗はない。そして現在ロード試合で訪れる京セラのやりやすさ、を語ってくれた。

「高校時代などは関西の暑さの中で、ずっと野球をやっていた。だから甲子園が暑い、というのはなかった。でもプロに入って大阪での試合は京セラがほとんどだから、たまに屋外の、ほっともっと神戸で試合があると、異常に暑く感じる。高校時代は甲子園も神戸も暑さを感じたことがなかったのに、不思議なものですね」

●選手、観客の両方のためにも暑さ対策は最重要課題だ。

「最近の方が地球温暖化などもあって、比べ物にならないほど暑い。だから甲子園にクーラーが入ったり、給水時間を取るのは当然。酷暑の問題がいろいろ言われているけど、その時代に即した方法をどんどん取り入れた方が良い。健康な状態でなければ、良いパフォーマンスは出せない。これはプロもアマも変わらない」

 最後に松井監督は冷静な意見をくれた。

 甲子園球場付近、兵庫県神戸市の平均気温は上がっている。松井監督が高校3年時の93年が25.7度だったのが、17年には29.1度になっている(酷暑と言われた、94年に29.1度に上がり、そこから先は27度を下回った年はない)。

『慣れ』もちろん大きな武器である。しかし近年の異常な気候に太刀打ちするには限界がある。データ的にも気温が上昇しているのは間違いない。選手のコンディションはもちろん、見る側としてもやはり最高の戦いを見たい。当たり前のことだが、暑さに対しての対応は周囲が常に率先すべきことだ。

 実際の経験者に聞くと関西勢の強さもわかる。これから先も関西勢優勢は続くのか。それとも他地域からも強豪校が生まれてくるのか。そこに注目するだけでも面白い。甲子園球場では、連日、暑さに負けない熱い戦いが繰り広げられている。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍やホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を不定期に更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。