日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、自身も1児の母である森田麻里子医師が、「ベビーフードと糖分の関係性」について「医見」します。
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市販のベビーフードに過剰な糖分が含まれているという報告書が、先週、世界保健機関(WHO)の欧州地域事務局から発表されました(※1)。この報告書は、2017年から2018年にかけて、オーストリアのウィーン、ブルガリアのソフィア、ハンガリーのブダペスト、イスラエルのハイファの4都市にある516の店舗を対象に、乳幼児用の食品7955種類を調べてまとめられたものです。
このうち3つの都市では、調査対象となった食品のおよそ半数で、カロリーの30%以上が糖類由来でした。また、3分の1程度は、砂糖や濃縮果汁、その他の甘味料が含まれていたことがわかりました。
この結果をWHOが問題視している理由は、2015年にWHOが出した糖類に関するガイドラインを見るとわかります。このガイドラインでは虫歯や肥満の予防を目的に、1日に摂取する遊離糖と呼ばれる糖類を、総エネルギー摂取量の10%未満、できれば5%未満にすることが推奨されています。遊離糖とは、甘みの主成分となるブドウ糖、果糖、ショ糖などの単糖類・二糖類をまとめた呼び名です。
ただし、この数字を今回の30%という数字と直接比較することはできません。WHOは、野菜や果物、牛乳など未加工の素材にもともと含まれている単糖類・二糖類は制限の対象にしていません。一方で今回の調査での「糖類」とは、素材にもともと含まれている糖も含めた数字なのです。
この調査で糖類が多かった品目を具体的に見てみると、ジュースや飲み物、果物や野菜のペースト、ヨーグルトといったものが並びます。果物に多く含まれる果糖や、乳製品に多い乳糖が糖類としてカウントされてしまっているので、これらの食品で糖類の量が多くなってしまうのは仕方ない部分があるでしょう。その他の食品を見ると、肉や魚がメインの主菜はもちろん、シリアル、さらにビスケットやウエハースなどの品目であっても、含まれている糖類の量の平均は、総カロリーの30%を下回っていました。
今回の調査では、購入してきた製品の成分表示を見て糖類の量を解析しています。成分表示は含まれている糖類全体の量しか記載がないため、調理加工で加えられた糖類がどの程度の量なのかはわかりません。また、食品の種類によって糖類が多いものと少ないものにはかなり差があり、全食品について何%以内なら良いと決めることは難しいようです。