これまでアルツハイマー病については、多くの治療薬が研究されては消えていき、現在まで根治が期待できる薬は登場していません。こうした中にあって、このジンジパインの研究が大いに期待されていることは間違いないでしょう。
歯周病菌はアテローム性動脈硬化症の患者の血管から見つかり、これが、重度の歯周病患者に狭心症や心筋梗塞の発生が多い理由の一つということが明らかになりました。また、最近では大腸がんの組織に本来、検出されることの少ない歯周病菌が発見されるなど、からだのさまざまな部位から歯周病菌が見つかっています。
実は、むし歯菌ではこのような報告はほとんどありません。
むし歯菌と違って、空気がないところでも生息できる歯周病菌は炎症の起こっている歯ぐきの奥に入り込み、歯槽骨(しそうこつ)までをじわじわと破壊することができる菌。同じようなメカニズムで炎症の起こった歯ぐきから血管の中に入り、全身をめぐって各器官で悪さをしそうなことは容易に想像できます。
歯周病菌は口の中にいるさまざまな菌の中でも特に悪性度が高く、やっかいな菌であるといえるでしょう。
だからこそ、たかが歯周病と侮らず、できるだけ早く治療をすべきだということなのです。
○若林健史(わかばやし・けんじ) 歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演