ヤクルト・村上宗隆 (c)朝日新聞社
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 5月から6月にかけてリーグワーストタイ記録となる16連敗を喫し、現在もセ・リーグ最下位に沈むヤクルト。しかしそんなチームにあって、希望の星と言える存在が村上宗隆だ。開幕からレギュラーの座をつかむと、ここまで20本塁打、63打点をマークし、高卒2年目とは思えない打棒を発揮している。そんな村上について、数多くの強打者とともにプレーし、またコーチとして指導してきた八重樫幸雄さんにその打撃の特長、また今後さらに飛躍するための課題などを聞いた。

ーーここまで大活躍を見せている村上選手ですが、八重樫さんはどのようにご覧になっていますか?

「まず単純に凄いね。高校出て2年目でこれだけ打てる選手はなかなかいないでしょう」

ーー具体的に村上選手の技術的な良さはどのようなところにありますか?

「タイミングを取る時の右足の上げ方ですかね。割と大きく一本足で上げるんだけど、ゆっくり上げて踏み出せる。プロに入って間もない選手はどうしても速いボールに差し込まれたくないから、普通はゆっくりタイミングを取れないんですよ。あとは、インサイドと高めに強い。高校までホームランを多く打ってきたような体の大きい選手は外のボール中心で攻められて、それを打ってきたことが多いから内角や高めはなかなか打てないんだけど、村上はしっかり打ちますから。あれだけ内角を打てる若い選手は珍しいですよ」

ーー逆に気になる点、もっとこうした方がいいというのはありますか?

「打ち方を見ていると、もっと打率を残せると思うんですよね。打ったシーンを多く見ているからかもしれないけど、『あの打ち方で2割3分しか打ってないのか』と思いますよ。足の上げ方が大きいから少し崩されやすいのかもしれませんね。左投手には苦労しているけど、これは左バッターであれば誰でも経験することだから。外のボールに腰を引かずに、しっかり踏み込んで強く引っ張れるようになればもっと打てるようになると思いますよ。あとは、三振を気にしないこと。村上みたいな選手は1打席の中で1球あるかないかの打ちやすいボールを長打にするのが仕事だから。それを、あれもこれもと当てようとして、打撃が小さくなったら魅力がなくなると思いますね。それには起用する側も大事。目先の勝ち負けももちろん大事だけど、村上に関しては、とにかく大きく育ててもらいたいですね」

ーー過去にご覧になってきた選手と比べて、どれくらいのレベルにありますか?

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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