たまたま結婚した相手が独身時代から住んでいたからという理由で、そのまま西日暮里千駄木近辺に住みついたのである。新しく仕事場を兼ねた住処を借りるにあたり、小さな飲み屋やレストランが多く、中年独身者と思われる人を多く見かける高円寺や、周りの独身女性たちに人気の高い代々木上原に引っ越すことも考えた。ところが東京の西南側は、さらに家賃が高いのである。この二駅、ワンルームならば、物件も豊富なので選びようもある。しかし独身者のくせに仕事場を兼ねるため、キッチンの他に寝室と仕事部屋は欲しいとなると、高い上に物件自体が非常に少なくなる。

 文京区よりも北か東に行くか。それとも23区内に出るのに1時間以上かかる「郊外」に出るか。

 郊外暮らしは長かったので、都内から夜に酒気を帯びて長々と電車に乗る面倒臭さは身に染みている。頑張って家庭を持ってローンを組んだマイホームでもあるならともかく、酒気を帯びて延々と終電を乗り継いで帰り、締め切って熱気にあふれた(夏の場合だが)マンションのドアを開けるというのは、どうにも楽しそうに思えない。

 不精者の私のことだから、おそらくなかなか都心に行かなくなるだろう。自営で働く独身の浮草者が、夜に友人と会うのすらも億劫になったら、引きこもりまっしぐらである。

 便の良い東京二十三区内で、2LDKくらいの間取りの物件が豊富で、安い家賃の掘り出し物が見つかりそうな場所。あとでまた触れることになるが、東日本大震災の後だったので、東京で今後大地震が起きることも、シミュレーションした。しっかりした免震構造で建てられた鉄筋マンションに住むのが一番安全であるのは自明だが、そんな蓄財はないし、収入も見込めない。築深のマンションしか選択肢がないのならば、せめて地盤の固そうなエリアがいい。気休めかもしれないけれど。

 という具合にぐるぐると迷い果てた結果、やっぱり文京区内で動こうということになったのである。昔から人が住んでいるエリアだから、地盤は固いと思われる。お世話になっているヨガスタジオもバレエ教室も、そのまま不便なく通えるし。

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