※前編記事「異例の広告賞受賞! 高崎市発の「絶メシリスト」はなぜ成功したのか?」よりつづく

■なぜ「絶メシ」は海外の広告賞でも評価されたのか?

「国内の広告賞と同じような反応だったのが興味深かったですね」――そう語るのは、「絶メシリスト」の仕掛け人の畑中翔太氏(博報堂ケトル)だ。

 街のいまにも「絶滅」してしまいそうな個人経営の飲食店に光を当てるという手法で昨年8月に、国内最大級の広告賞「ACC TOKYO CREATIVE AWARDS 2018」(マーケティング・エフェクティブネス部門)で最高賞を受賞した高崎市のシティプロモーション「絶メシリスト」。

 その後も、日本国内で複数の広告賞を受賞したが、今年3月にはアジア最大の広告の祭典「アジア太平洋広告祭(ADFEST 2019)」で3部門で金賞を受賞。続いて、5月には国際広告賞の中でも古い歴史を持つ「ニューヨークフェスティバル2019(New York Festivals Advertising Award 2019)」でも銅賞を受賞するなど、海外でも高評価を得ている。

 畑中氏はこう続ける。

「海外の広告賞の場合、“絶メシ”という言葉のおもしろさは捨てなければいけませんでした。どういう言葉なら企画のコアの部分がブレることなく、上手に変換できるかと考え、 “レッドリスト・レストラン”と訳したのですが、ひとつにはそれがよかった。レッドリストとは絶滅の危機に貧している野生生物のリストのことで、その危機意識は世界共通のもの。同じく、“絶メシ=昔ながらの町のレストラン”の危機的状況も世界共通というか、似たようなものだったんです。実際、海外でも日本でも絶メシキャンペーンの受けとめられ方、共感のされ方もすごく似ていましたね」

 たとえばシンガポール。屋台文化が根強く、また自炊の習慣もないことから、シンガポールで暮らす人々にとって安くて美味しい食堂はなくてはならないものだ。国民の8割が暮らしているという公団住宅「HDBフラット」の1階部分はたいてい屋台村のようなエリアになっており、朝から地元の人々がそこで朝食をするのが日常の風景となっている。しかし、そうした国であっても、ローカルフードは存続の危機に直面しているという。

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格差が加速させる町のメシ屋の後継者問題