爪のメラノーマ(提供)
爪のメラノーマ(提供)
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大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

 あまり知られていませんが、爪にもがんはできます。爪のけがが治らずに放置していたら、実はがんだったというケースも少なくないといいます。京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師が、爪が黒く変化したとき、考えておくべき疾患について解説します。

*  *  *

 私は球技がとても苦手にもかかわらず、漫画「スラムダンク」の影響を受けて高校はバスケ部に入りました。中学まではガリ勉だったこともあり、アウトローな三井寿に憧れました。下手だったドリブルの練習はほとんどせず、フォームが崩れるほどスリーポイントシュートの練習に打ち込みました。そもそもバスケが下手なので、スリーポイントだけ特別上手になることはありません。それでも、部活の仲間はスリーポイントをたまに決める「バランスの悪い私」を面白がってくれました。スリーポイントを打つことだけが楽しみでした。

 さて、バスケはとても激しいスポーツでけがも多くします。下手な私は人一倍けがをしました。けがに便乗して部活もよく休みました。もともとスラムダンクに憧れただけという薄い動機です。結局、1年も続かず、誰にも引き留められることもなくバスケ部を去りました。

 あるとき、足の親指の爪に内出血を見つけました。その後、爪は黒く変化して剥がれ落ちました。その爪だけは今も伸びが遅いようです。

「車のドアに手を挟んだんです。そのときの爪のけががまさかこんなことになるなんて」

 医学部の学生時代、メラノーマ(悪性黒色腫、ほくろのがんともいわれます)の患者さんから聞いた言葉です。

 爪のけがが治らずに放置していたら、実はがんだった。大学病院で皮膚科医として働いている今、年に数回経験します。

 あまり知られていませんが、爪にもがんはできます。そして、爪のメラノーマは日本人に多いことが知られています。けがをきっかけにがん化することもあり、1カ月以上治らないじゅくじゅくした傷は注意が必要です。これとは別に、メラノーマが爪に自然発症する場合もあります。

 さて今回は爪が黒く変化したとき、考えておくべき疾患について解説します。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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