さらなる成長が期待される紀平梨花(左)と宮原知子(右) (c)朝日新聞社
さらなる成長が期待される紀平梨花(左)と宮原知子(右) (c)朝日新聞社

 濱田美栄コーチの下で切磋琢磨する、紀平梨花と宮原知子。よきライバルである二人はともに、来季新しい振付師によるショートプログラムで新たな表現を開拓する。

 5月24日、千葉市・幕張イベントホールで、今年も「ファンタジー・オン・アイス」が幕を開けた。羽生結弦、アリーナ・ザギトワなど世界トップレベルの現役スケーターが参加するこのアイスショーで、日本女子を引っ張る紀平と宮原は、早くも来季への第一歩を踏み出した。

 宮原は、公演開幕当日の朝自らのブログを更新し、来季の新プログラムを発表していた。ショートの曲に選んだエジプト調のダンスミュージック『Yalla, Tabla & Percussion Solo, Egyptian Disco (Buddha Bar Edit) / DJ Disse』について「今までの自分のイメージとは裏腹の曲ですが、『新しい挑戦として少し変わったものを』と思い、選曲致しました」とつづっている。

 振付師は、近年前衛的な振付で頭角を現したブノワ・リショー。メタリックな上衣と黒のパンツのセパレートタイプの衣装で登場した宮原は、ブノワ・リショーらしいコンテンポラリーダンス(既成のジャンルに属さない、自由なダンス)風の振付を、持ち前の端正なスケーティングで滑りこなした。「これまでの自分にはなかった動きがたくさん入り、難しいプログラム」とブログで吐露していた宮原だが、彼女には吉田都さんにも指導を受けたバレエの基礎がきっちりと身についている。基本的な所作の美しさが、モダンな振付に挑戦するときも必ず宮原を助けるだろう。

 そして、紀平の新しいショートプログラムは『Breakfast in Baghdad』。上下黒のシックな衣装に身を包んだ紀平は、高音の女性ボーカルによるエキゾチックな曲に乗り、大人びた演技を披露した。今季のエキシビション『Faded』で見せていた陰のある曲もこなす表現力の幅が、来季は競技会でも発揮されそうだ。こちらの振付は、ダンサブルなナンバーを得意とするシェイ=リーン・ボーン。氷上で抜群の音感を見せてシニア1年目としては驚異的な演技構成点を得ていたのみならず、自身のツイッターで披露する陸上のダンスレッスンの動画でも、卓越した“踊れる能力”を感じさせていた紀平とシェイ=リーン・ボーンのタッグは、フィギュアスケートファンの期待が高まる組み合わせだといえる。

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紀平と宮原の表現面の成長に期待