■相手に花を持たせて引き上げてもらうのもアリ
吹原:ただ、現在の日本で成果をアピールすると、めざとく潰そうとしてくる人間も出てきそうです。
田村:おっしゃるとおりです。だから、相手が大事な上司だったら、花を持たせてあげるというのもひとつの手だと思います。
吹原:その手がありましたか。でも裏切られて、手柄をあげ損にならないかも心配です。
田村:だから、相手を観察するのが大事です。手柄を譲り受けたことを覚えていてくれて、機会があったら自分を引き上げてくれそうな人物かどうか。それをしっかりと見極めましょう。
吹原:勉強になります。僕は今、逆に手柄を持っていく人間だと思われないように気をつけています。
田村:とおっしゃいますと?
吹原:僕は脚本家や劇団の主宰などの仕事をしているので、どちらかというと脚光を浴びるポジションにいます。でも、実際のところ、僕があげた成果は、一人で成し遂げたものではないんです。演劇は役者や舞台美術、照明などからなる総合芸術ですし、脚本だってスタッフとの会議から生まれます。
田村:そうですね。
吹原:全員が前に出るわけにはいかないので、僕が代表することもあるのですが、そんなときにはみんなへの感謝を忘れずに、謙虚でいたいと考えています。
田村:吹原さんのように、性善説で成功する人が、本当に実力をもった人だと思います。私くらいのレベルでは、性善説だと危ないです(笑)。
吹原:ありがとうございます(笑)。そう思うようになったのは、脚本家として駆け出しの頃。その時期って、アイデア出しのためだけに会議に呼ばれることも多いんです。当然、名前はでないのですが、感謝されるだけでも報われた気持ちになったものでした。だから、僕もそういう感謝の心を忘れないように心がけているんです。
田村:すばらしいことですね。
吹原:反対に、手柄を独り占めして威張っている人を見るとかわいそうになりますね。どんどん人望を失いますから。自分で自分の味方を減らすアホな人だなと同情してしまいます。一方で、独り占めしている人間というのは、自分がそうしているというのを意外と気がついていると思うんです。そういうときに、寄り添ってあげると、味方に付けられるのではないかと思いますね。誤解されていて辛いですよね、みたいな感じです。
田村:成果をアピールするか、相手に譲るのか。その結論は、結局のところ、ケースバイケースだというのが私の考えです。周りの環境をよく観察して、どうすれば自分に得があるのかで選択すべきです。
吹原:なるほど。
田村:人生には“例外”しかありません。だから、『頭に来てもアホとは戦うな!』でも、もっと事例を分岐させて事細かに書きたかったのです。でも、そんなことをしていると、本が辞書のように分厚くなってしまう(笑)。だから、なるべく一般的に通用することを記しました。