「さまざまな作品を後世に残すために、電子ライブラリーなどのデジタルアーカイブを作る動きも活発化しています。ただし、人、金、権利という三つの壁が存在します。慢性的な人手不足や予算不足はそう簡単に解消されません。加えて、不明となった著作権やあいまいな肖像権まで立ちはだかってしまっては、どうすることもできないのです」(同)
ちなみに、権利者不明の作品を使える方法は存在する。「著作権者不明等の場合の裁定制度」というもので、権利者の許諾を得る代わりに文化庁長官の裁定を受け、通常の使用料額に相当する補償金を文化庁に供託すれば、適法に利用できるようになるのだ。
「従来は裁定が妙に生真面目で、許可が受けづらかったのですが、改善も進んでいます」(同)
既に保護期間が死後70年に延長された今、われわれにできることは何なのだろうか。
福井弁護士は言う。
「デジタル技術やインターネットの広がりによって、海賊版のような違法行為が蔓延する一方で、クリエーターにとってはチャンスも広がっています。保護期間延長という疑問が残る改正もありましたが、誰もが利用しやすいデジタルアーカイブの構築や、写真愛好家の“終活”など、新しい概念で、楽しく前向きな議論をしていくほうがいいですよね? 海賊版対策にしても、100%実効力のあるものは存在しないわけで、そこそこの効果が得られるものを組み合わせて試してみるとか、やりようはあると思うのです。さまざまな立場の人との対話を通して、著作権の正解を模索していくことが大切ではないでしょうか」
取材・文:吉川明子
※アサヒカメラ2019年5月号より抜粋