福井健策(ふくい・けんさく)弁護士、ニューヨーク州弁護士、骨董通り法律事務所For the Arts 代表パートナー。主な著作に『18歳の著作権入門』。日本大学芸術学部客員教授
福井健策(ふくい・けんさく)
弁護士、ニューヨーク州弁護士、骨董通り法律事務所For the Arts 代表パートナー。主な著作に『18歳の著作権入門』。日本大学芸術学部客員教授
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 権利者の許可なくインターネットに上げられたと知っていながら漫画や写真などをダウンロードすることを違法とする著作権法改正案の国会提出が見送られた。SNS時代になって複雑化しているように見える著作権問題。今回はその基礎知識を学び直したい。

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 本誌が「まとめサイト問題から考える『SNS時代の著作権』」という特集を組んだのは2017年4月号のこと。インターネット上で横行する写真の無断使用問題を追及していた本誌としては、著作権について正しく理解することが第一歩だと考えたからだ。

 著作権に関する基礎知識があれば、自分が撮影した写真をインターネットやSNSでどのように発表するのか、また、自分の写真が無断使用された際、どう対策を取っていくかを自ら考え、判断する一助にもなるだろう。

 現行の著作権法が制定されたのは1970年(1899年に制定された旧著作権法を全面改正)で、その後、時代の変化に合わせて幾度となく改正が行われてきた。

 今年3月、国会への提出を目指していた著作権法改正案が頓挫した。改正案の目玉であった、著作権侵害物の全面的なダウンロード違法化について社会の不安や反発が強く、十分な理解が得られないと判断されたためだ。

 今回の著作権法改正をめぐる、一連の騒ぎは何だったのか? なぜダウンロード違法化がここまで問題視されたのか? 著作権法が改正されることで、ネット上で横行する写真の無断使用は根絶できるのか? といった疑問について、著作権問題に詳しい福井健策弁護士の解説を交えつつ、ひもといていきたい。

 ことの発端は、被害が深刻化していた漫画の「海賊版サイト」対策をめぐる議論だった。以前から海賊版サイトは無数に存在していたものの、昨年4月に突然閉鎖した「漫画村」は、閉鎖直前の月間アクセス数が約1億7千万回とケタ違いに多かった。出版社や漫画家が本来得られたはずの利益を著しく侵害するものであり、一刻も早い対策が求められていた。

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サイトブロッキングの代わりとしての著作権法改正