「『原作のまま』という条件がつき、加えて『著作権者の利益を不当に害する場合』という言葉があれば、本当に阻止したい海賊版ダウンロードに絞りつつ、一定の抑止効果は出せたのではないかと考えられます」(同)
今年3月、政府が国会への提出を断念したことで、法改正への具体的な流れはいったん立ち止まることになった。
ただ、言うまでもないが、写真の無断転載などは現行法ですでに違法行為であることを忘れないでいてほしい。
あらためておさらいしておこう。写真を撮影した著作権者が自分のサイトやブログ、SNSに写真をアップしたとする。誰かがその写真を気に入り、自分のパソコンやスマホに保存して見て楽しむぶんには「私的使用」として法的には問題ない。ところが、他人の作品を自分の作品の中で紹介する「引用」などの「制限(例外)規定」に当たる場合を除いて、自分のサイトやSNSに利用する行為は違法となる。
「私的な転載というものはありませんから、これは現行法でも公衆送信権の侵害となります。写真の無断転載については、現行法ですでに違法ですから、今回の法改正とは直接的な関係はありません。ただし、そうした無断転載からのダウンロードが違法になれば、間接的な抑止効果は期待できるかもしれません」(同)
“根本的な解決”がないなか、過度に萎縮せず、自由な表現活動を守るために一人ひとりができることは、「著作権に関する正しい知識を身につける」「写真の無断使用などの違法行為に対しては厳正な態度で臨む」ということに尽きるのかもしれない。いささか地味ではあるものの、一連の著作権法改正騒動で気づかされたのは、そんなあたりまえなことだったのだ。
取材・文:吉川明子
※アサヒカメラ2019年5月号より抜粋