そこで同月に政府が打ち出したのは「短期的な緊急処置としてのサイトブロッキング」。海賊版サイトをインターネット上でブロックして見られなくすることで、被害を元から断とうというものだ。ところが、ブロッキングは日本国憲法で定められている「通信の秘密」を侵害する行為として、政府がインターネットサービスプロバイダーなどの民間企業に「緊急処置」の名目でブロッキングを強制することへの反発が広がった。

 また、政府がある特定のサイトについて、立法によらずにアクセスを制限できるという前例を作るべきではないとの指摘もあった。そのため、昨年10月にはサイトブロッキングの法制化はあえなく頓挫してしまう。

 こうして、サイトブロッキングに代わる措置として、著作権法改正が議論されるようになった。そのメニューの一つが、「ダウンロード違法化」だった。

 もともと著作権法では、「私的利用」に限って、著作物のコピーやダウンロードを認めていた。これは他人の著作物でも、たとえそれが海賊版であっても、個人的な楽しみや勉強のために私的に複製することは原則的に許されるという例外規定である。

 しかし、インターネット上に違法アップロードが蔓延するようになるにつれ、さすがに海賊版と知りつつダウンロードする行為は私的複製から外すべきではないかという議論が起こるようになった。

 その第一歩として、2009年の法改正で、「著作権者に無断でアップロードされた音楽と映像をダウンロードする行為」を違法化し、12年に刑事罰の対象となったのだ。

 映画館で映画本編の上映前に必ず流れる「NO MORE映画泥棒」のCMはご存じだろう。その画面には<市販の音楽や映像が違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードするのも犯罪です>という警告文が記されている。今ではすっかり定着しているかのように見える、音楽や映像のダウンロード違法化と刑罰の付与だが、改正当時も大きな騒ぎになった。

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摘発例はゼロ