描かれる大相撲。描かれることでその美しさや力強さや技法が伝えられ、その素晴らしさを実感させてくれる。相撲を愛する人たちはまた描かれた相撲も愛してきた。
その伝統は今も廃れていない。私はツイッター上に日々上げられる、相撲ファンが描く相撲絵をここ数年、ずっと楽しんできた。誰に頼まれたわけでもなく、好きな力士の姿を趣味で描く。コミケ・カルチャーにおける二次創作のように多分にデフォルメされたり、愛情でずいぶんと可愛くなっていたり、様々な物語の中にあったり。21世紀の相撲絵の楽しさにワクワクしてきた。それは相撲伝統の新しい発露のように感じられた。
そこで昨年5月にツイッターで募集した相撲絵を集めた「平成の相撲絵師たち」展を両国のギャラリーで主催した。5日間だけ。全国から様々な作品40点あまりが寄せられ、小さな内輪のお楽しみ、のはずが、ふたを開けてみたら大相撲の力士たちや行司さんが訪れてくれたり、たまたま朝稽古見学をしたときにDMハガキを渡した横綱白鵬が立派なお花を贈ってくれたり、相撲ファンが連日100人以上も集まり、朝日新聞や毎日新聞にも取り上げてもらったりした。相撲絵は今も私だけでなく、多くの相撲ファンを魅了し、相撲文化伝統の一部なんだと得心した。
さて、今年は「21世紀の相撲絵師たち」展として、同じ会場で再び相撲絵師展を開いている。参加者は37名。高校生からプロの画家、さらに現役好き!というと、それだけでみんなすぐに友達になれるのがありがたい。
参加者の一人、きなこさん(ツイッターのアカウントネーム)と、8才になる息子さんは大の横綱白鵬のファン。お母さんのきなこさんは白鵬が3月場所で全勝優勝した、その決まり手の瞬間を切り絵にして15日分額に収めた。
「取組の一瞬を切り取ると、お相撲さんの身体はこんなにアクロバティックに動いているんだというのも改めて感じて面白かった。相撲は取る、見る、だけじゃなくて、こうして作るという楽しみ方もできる。15日間毎日勝ち続けることの奇跡みたいなものを感じながら作った」と話す。