5番打者はここまで主に松山竜平とバティスタの二人が務めているが、この二人も揃って打率1割台と調子が上がっていない。その成績に引きずられるように開幕から好調を維持していた主砲の鈴木にも影響が出て自己ワーストとなる22打席ノーヒットも記録した。このような状況を見ると、打線に関しては丸の存在そのものよりも、その影響を受けた周りの選手の問題ということが言えそうだ。
野手でもう一つ気がかりなのが守備の乱れだ。ここまでチーム失策数は14試合で19とダントツのリーグワースト。名手の菊池涼介が早くも3失策を記録しているのが象徴的だが、松山のファースト、西川龍馬の外野など本職ではない選手が苦しんでいるのも目立つ。4月11日のヤクルト戦では試合序盤に松山と西川の守備位置を入れ替え、球場からはざわめきが起きるほどだった。守備の立て直しは急務と言えるだろう。
そして大きな不安要素はリリーフ投手陣だ。守護神の中崎翔太は防御率こそ2点台だが、ここまで4試合に登板して3試合に失点。昨シーズン救世主となったフランスアも4月2日の中日戦で3失点を喫して負け投手になるなど、昨年のボールの勢いに比べると少し陰りが見えている。
安定しているのは新外国人のレグナルトくらいであり、二軍で先発として調整していたアドゥワ誠を急遽リリーフとして一軍登録したあたりに台所事情の苦しさが表れている。このまま9回を中崎に任せるのか、もしくは入れ替えるのか、勝ちパターンでの継投をどう見直すかという点は避けては通れない問題と言えるだろう。
ここまで不安要素を書き連ねたが、明るい要因がないわけではない。主砲の鈴木は不振に陥りながらも本塁打、打点ではリーグトップの成績を残しており、その長打力は昨年よりも明らかにスケールアップしている。
また先発投手陣ではトミー・ジョン手術から復活した床田寛樹が安定したピッチングを見せており、サウスポー不足のチームを救う存在となっている。丸が抜けた影響、勤続疲労の救援投手陣は確かに不安だが、他の5球団と比べても戦力的に劣っているわけではない。実績のある選手がこの状況に焦ることなく、まずは持っている力を発揮することができれば、V字回復も十分に期待できるだろう。
シーズンは始まったばかり。鯉のぼりの季節に向けて、カープがどこまで立て直してくるかに注目したい。(文・西尾典文)
※成績は4月13日終了時点
●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。