さっきも書いたように、そのシーンは医者が受付で突然踊り出し、周りの患者さんや他の医者が呆気に取られるというシーン。自分では恥ずかしさは完全に払拭したつもりでしたが、わずかに残っていたのかもしれません。カメラが遠くに行くと、周りの患者さん役や他の医者役の方々のリアクションも画に入る訳で、残っていた恥ずかしさがムクムクと湧いてきて、それが不安にさせたのかもしれません。逆にカメラが近い時は自分の芝居に集中し、恥ずかしさを感じず、それが安心感につながった。と、まあ、なんとな~くですが、そんな気がします。
もちろんドキュメンタリーのカメラの前では、「素」の佐藤二朗をさらけ出さなければいけず、映画のカメラの前では、「役」を芝居でさらけ出さなければいけないという違いはあれど、同じカメラでこうも感じ方が変わるのか、と驚きました。
なんにせよ、僕はまだまだ未熟だなあと感じるのと同時に、ドキュメンタリーにしろ映画にしろ、カメラの向こう側にいるであろう、視聴者の方々や映画をご覧になるお客さまたちに、今後も、僕にできる範囲で、「僕なりのおもてなし」をしていこうと、改めて、思ったりしたのでした。(文/佐藤二朗)
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