「僕がリールセに行った頃は『レベルの低いベルギーリーグになぜ、わざわざ行くんだ?』というネガティブな見方をされることが多かったですね。でも、欧州内でのステップアップを視野に入れると、スカウトの目に留まりやすいベルギーは非常にいいリーグ。リールセ時代にはケヴィン・デブライネ(マンチェスターC、当時ゲンク)やロメル・ルカク(マンチェスターU、当時アンデルレヒト)、アクセル・ヴィツェル(ドルトムント、当時スタンダール)といった現在のスター選手たちとも対戦経験があります。まさにブレイク前のタレントの宝庫で、僕自身はとてもいい経験になりましたし、挑戦しがいがあるリーグだとも感じた。そんな位置づけは今も変わっていないと思います」と川島はベルギーリーグで戦う重要性を改めて説明していた。
2015年夏にベルギーを離れた川島の後に同国でインパクトを残したのが、久保裕也(ニュルンベルク、当時ヘント)だった。2017年1月に約4億2000万円の移籍金でスイス1部のヤングボーイズから加入した彼はわずか半年間で公式戦2ケタゴールを達成。短期間のゴールラッシュで評価を急上昇させることに成功する。翌17-18シーズンには森岡もポーランド1部のシロンスク・ヴロツワフから加入。半年間でリーグ戦7ゴールをマークし、強豪のアンデルレヒトに買われた。この2人の残した爪痕が深く刻まれたのは間違いない。同時期に動画配信事業やオンラインゲーム事業などを手がける日本企業のDMM.comがシントトロイデンを買収。100%出資で経営権を獲得したこともあり、日本人選手のベルギー大量参戦が実現し、現在に至っているのだ。
「DMM.comが果たした役割も大きいでしょうけど、ベルギーリーグには外国人枠がないことも重要なポイントです。『ベルギー国内で育成された選手を公式戦に少なくとも6人は登録しなければいけない』というルールはありますが、それを守っていれば外国人は何人保有しても構わない。となれば、ベルギーに日本人選手を送り込もうと考えるエージェントも増えて当然です。川島がフランス、久保がドイツと欧州5大リーグにステップアップしている例もあるように、ベルギーで活躍できれば、より資金力のあるハイレベルなクラブに行く道も開けてくる。チャンスが転がっている点もベルギーの大きな魅力なんだと思います」と海外移籍に詳しい代理人も語っていたが、かつてオランダが担っていた「欧州のゲートウェー」の役割は今やベルギーに完全にシフトしたと言ってもいいだろう。