傷害容疑で千葉県警松戸署から送検された栗原なぎさ容疑者(c)朝日新聞社
傷害容疑で千葉県警松戸署から送検された栗原なぎさ容疑者(c)朝日新聞社
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 千葉県野田市の小学4年生、栗原心愛(みあ)さん(10)が自宅で亡くなった事件は、痛ましい事実が徐々に明るみに出ている。14日に心愛さんに対する別の傷害容疑で再逮捕された父・勇一郎容疑者(41)が虐待する様子を、母親のなぎさ容疑者(31)が撮影していたこともわかり、長時間立たせたり、食事を与えなかったこともあったという。

【もうこの笑顔はみられない。亡くなった心愛さんの写真はこちら】

 小学校のアンケートで「お父さんにぼう力を受けています」と書いたことをきっかけに、心愛さんは一時保護され、その後は親族宅で生活。しかし、父親からの強い要求や恫喝により市教育委員会がアンケートのコピーを父親に渡したほか、柏児童相談所は虐待のリスクが一時保護解除時より上昇しているのを把握しながら、帰宅を認めていたと報じられている。

 父親に虐待される我が子を、どうして母親は守ることができないのか。どうして児童相談所などの関係機関は判断を誤るのか。そして、なぜ悲しい事件が繰り返されてしまうのか。

 DV被害者支援団体「エープラス」代表の吉祥眞佐緒さんは「児童虐待が起きている家庭には、もれなく両親の間にDVがあると考えられる」と指摘する。それらが縦割りで連携できるシステムがないことに問題があると危機感を持つ。

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「もうお父さんとは暮らしたくない。お母さんとふたりだけで暮らしたい。でもダメって言われた」

 これは少し前に私の事務所に相談に来たA子さん(30代)の子どもBくん(小学生)の言葉だ。

 千葉県野田市の自宅で小学4年生の栗原心愛さん(10)が亡くなり、両親が逮捕された事件の報道を目にして、Bくんのことを思い出した。どうしてこのような悲しい事件が無くならないのか、DV被害者支援の視点から考えていきたい。

 A子さんは夫から首を絞められるなどの身体的暴力を受けていたほか、毎日のように家事や育児にダメ出しをされ、怒鳴られていた。DVが始まったのはBくんを出産した直後。結婚当初は夫婦共稼ぎで、出産後も仕事と育児を両立するつもりだったが、夫は家事や育児には全く理解も協力もしないどころか、細かいことにダメ出ししては、A子さんに暴力を振るうようになった。

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母の頭の中は「どうしたら夫に怒られないか」ばかり