柳原可奈子 (c)朝日新聞社
柳原可奈子 (c)朝日新聞社

 柳原可奈子が『バイキング』(フジテレビ系)に2月5日、出演。一般人男性と結婚したことを発表した。友人の紹介で知り合い、1年の交際を経てゴールイン。プロポーズのときに指輪を渡されたが、サイズが合わず指の爪のところまでしか入らなかったという。

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 柳原可奈子の登場は鮮烈だった。2007年に始まった『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)の初回放送で彼女はショップ店員のネタを披露。これが爆笑をさらい、初代レッドカーペット賞を受賞した。その後も「総武線の女子高生」「スタイリスト北条マキ」「化粧品売り場の店員」など、どこかで見たことがありそうなひとクセある女性を演じるコントを量産して、ネタ番組で活躍した。

『爆笑レッドカーペット』から派生したコント番組の『ザ・スリーシアター』『爆笑レッドシアター』では、はんにゃ、しずる、ジャルジャルらと並んでレギュラーを務め、当時のお笑いブームの中心的な存在となった。最近はテレビでネタを披露する機会が少なくなっているものの、タレントとして息の長い活躍を続けている。

 柳原可奈子の特徴は、芸人としての顔とタレントとしての顔が完全に別物であるということだ。芸人が舞台とテレビでキャラクターを使い分けること自体は決して珍しいことではないのだが、彼女の場合、そのメリハリが誰よりも極端である。

 ネタにおいては、女性の自意識が無防備にあふれ出る瞬間を意地悪な目線で切り取っている。だが、タレントとしての彼女はそういう底意地の悪い部分を見せることがほとんどない。女子アナ的なサブMCのポジションで進行役を務めたり、美声を生かして声優業やナレーションを担当したりする。バラエティ番組でも底抜けに明るく振る舞い、常に笑顔を絶やさない。

 彼女自身も、その二重人格のような分裂状態に自覚的である。2011年に行われた初めての単独ライブ『見せたがり女』では、女性コラムニストがタレントとしての柳原自身を皮肉っぽい目線で斬る、というネタを演じていた。テレビで女子アナよりも女子アナらしくそつない立ち回りを見せる柳原に不満をぶつけていた。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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