「最近やっと、自分の居場所を見つけられた気がしています。なんで歌っているんだろう? なんで音楽の世界にいられるんだろう? と思いながらここまできました。音楽や俳優の仕事を目指しているかたがたくさんいるのは私もわかっているから、だから、ごめんなさいという気持ちも持ちながら……。でも今は、私がやっていることは、私がやっていいこと。そう思えるようになってきました」
中島美嘉が『雪の華15周年ベスト盤 BIBLE』をリリースした。全43曲3枚組CD。アルバムタイトルにもなっている代表曲「雪の華」は、オリジナル、ピアノと歌のバージョン、レゲエバージョンの3テイクを収録。そして、初回限定盤には2017年のツアーの映像も23曲パッケージ。その各シーンで歌う中島の姿はオリジナリティにあふれている。
「コンサートのときのメイクは自分でやっています。あがり症なので、開演前に何時間も座ってメイクをしていると緊張が増してきちゃうんですよ。衣装もすべてをスタイリストさんに任せるのではなく、私がオフのときに着ている服からも選びました」
衣装は早替えで7パターン。服が変わると、ステージの世界観も変わり、音楽が物語性を帯びる。際立っていたのは「Fighter」「TOUGH」「I DON’T KNOW」など、ロックテイストの曲を歌うときの黒革の上下とタトゥー柄のレギンスだ(写真)。
「2017年のツアーで最初に決めた衣装でした。全部私服です。タトゥー柄のレギンスは確か原宿で見つけました。その上に着けている黒の革のブラとミニは、ハロウィンパーティーでキャットウーマンの仮装をしたときに着ました。『GLAMOUROUS SKY』と『一色(ひといろ)』を歌うときの赤いラヴジャケットときらきらのレギンスも自分の服です(写真)。デビューしてすぐに買いました。映画『NANA』でも着ていた服です。あの衣装になると、ファンのかたがたは『NANA』の曲を歌うとわかってくれます」
こうして話を訊くとわかるとおり、中島は色彩を強く意識している。
「私自身はぞっとするほど美しいものが好き。だれもが憧れる美女やかわいい女性よりも、寒気すら感じるような人にあこがれます。韓国ドラマ『トッケビ』に“赤い服の女”として出演するイエルってご存知ですか? 画面に彼女が現れると、息がつまりそうになります。映像を例にあげると、アメリカのサイコホラーのドラマ『ハンニバル』の世界に魅力を感じます。あのドラマは、赤も青もぞっとするほど美しい。死体ですら美しい。花瓶の代わりに生の臓器に花が刺してある場面すら美しい。私、ホラーやスリラーにまったく興味はないのに、あのドラマの色には魅かれます。たぶん、私が鹿児島の山の中で生まれ育ったからだと思う。色鮮やかな花も、手が届きそうなほど近い空の星も、ぞっとするほど美しかったからです。ああいう世界観をコンサートやメイクでも実現させたいとは思っています」