「このプログラムでは、行動経済学の『損失回避性』という考え方をベースとしています。損失回避性とは、人間は得をするよりも損をしたくないという思いが強く、損失を回避することを重視して行動するというものです。この保険でもステータスによっては保険料が上がり得ますが、あえてその可能性を提示することで、継続的な健康増進を促しています」(住友生命保険相互会社・Vitality推進室室長の雨宮大輔氏)
事実、南アフリカではVitalityによって「生活スタイルが変わった」という契約者は非常に多いという。
同社ではポイントの採点方法にも工夫を凝らす。生活習慣のアンケート回答や健康診断書の提出、さらには専用アプリと連携して計測する日々の歩数・心拍数、「マラソンの完走証明書」までもポイントの対象となっているから驚きだ。
また「行動変容につながるきっかけ作りにはかなり力を入れている」と雨宮氏は言う。
「このプログラムでは『リワード』と言って、スポーツジムの利用料やヘルシーフードなど、提携するパートナー企業が提供する商品やサービスが割引かれる特典があることも特徴。これらは『安くなる』ことをウリにしつつ、こうしたリワードを『運動を始められる』きっかけにすることを狙いとしています」(雨宮氏)
契約件数は発売開始から11月末までの4カ月で13万件を達成。「滑り出しとしては上々」という。
病気や事故といったリスクに備えるのではなく、リスクを回避する――そうしたコンセプトを敷いている点で、従来の保険とは大きな違いがある、この健康増進型保険。昨今の健康ブームと合わせて、このような保険が日本人の健康志向を後押しすれば、冒頭の日本の「不健康長寿」問題も解決する……かもしれない。(取材・執筆・撮影/田代くるみ@Qurumu)