紅白の紅組司会で言い間違いを謝罪した広瀬すず (c)朝日新聞社
紅白の紅組司会で言い間違いを謝罪した広瀬すず (c)朝日新聞社
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矢部万紀子(やべまきこ)1961年三重県生まれ、横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』
矢部万紀子(やべまきこ)1961年三重県生まれ、横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』

 広瀬すずちゃんの「NHK紅白歌合戦」での司会が、いろんな人から叱られている。「司会起用は間違いだった」などとも書かれていた。少し整理するなら。

【失敗(1)】いきものがかりが歌っているとき、ピアスを直していた。
 確かに、舞台上の全員が「じょいふる」に合わせてタオルをぐるぐる回していたから、「素」に戻ったようなすずちゃんの姿は目立ってしまった。

【失敗(2)】欅坂46の曲紹介の途中で歌が始まってしまった上に、歌い終わりに「乃木坂46のみなさん、ありがとうございました」と言った。
 欅坂か乃木坂か、私もあまりわからない。だが「初のミリオン『ガラスを割れ』。メンバーに加え」で曲が始まってしまったから、途中から出てきた黒い衣装の集団については謎のままとなってしまった。

 でも、でも。それぐらい、いいじゃないですか。っていうか、この事態をNHKはすごく歓迎しているはず、と思う。だって、すずちゃんの司会起用は、「なつぞら」の宣伝のためだったんだから。

 すずちゃんの「失敗」のおかげで、翌日からすずちゃんを叱る報道が相次いだ。そのたびに、「4月からの朝ドラ『なつぞら』で主演」と書かれた。これ、すっごい宣伝だ。すずちゃんがパーフェクトだったら、こうはならなかった。「なつぞら」スタッフ、きっとほくそ笑んでいる。

 私ごとで恐縮だが、昨年4月『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』という本を上梓した。その中に「ヒロインと、紅白司会と」というコラムを入れ、「2018年の司会は、広瀬すずで決定」と予測した。「記念すべき朝ドラ100作目『なつぞら』のヒロインが、起用されないはずがない」と。

 2010年に朝ドラ「ゲゲゲの女房」ヒロインを演じた松下奈緒を起用して以来、紅組司会はほぼ「その年に朝ドラのヒロインを演じた女優」の枠になった。5年後、綾瀬はるかを起用した(2度目)が、これは「精霊の守り人」という大型ドラマの前宣伝で、ここから潮目が変わったと思う。16年は、17年4月から始まる朝ドラ「ひよっこ」のヒロイン有村架純を起用。17年も有村だったのは、今から思えば18年4月からの朝ドラ「半分、青い。」ヒロイン・永野芽郁の事務所が司会を断ったからかもしれない。

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終わってみれば司会上手だったのは…