佐々木 プロの写真家であれば、シャッター速度一つとっても明確な意図のもとに選択していますが、スマートフォンで何げなく撮影した写真であれば、そういう主張は難しそうですね。一眼レフだと、オートフォーカスやプログラムモードのときとか。テクニカルな部分だけでなく、構図やシャッターを切った瞬間など、自分がなぜその写真を撮ったのか常に意識しておくことが、創作性の確保につながるのかもしれません。
岩崎 写真はみんな同じに見えるかもしれませんが、スマートフォンやタブレットで見るぶんには問題なくても、僕らが撮っている写真は、等倍で見てプリントすれば明らかに画質が違うんですけど。
佐々木 でも、たとえ一眼レフではなく、iPhoneで気軽に撮った写真だったとしても、自分が撮影した写真であることには変わりないという事実もあります。
三平 一眼レフであれば、明確な意図や主張を書きやすいかもしれませんが、iPhoneだと難しそうですね。
有賀 写真に詳しい人ならそれなりに書けるでしょうけど、書けない人は書けないでしょうね。でも、80年代後半くらいにオートフォーカスカメラが出てきた時にも「最近のカメラは簡単でしょう?」ってよく言われましたよ。フィルムからデジタルに移行した時もそうでした。ところが、文章だって紙とペン、パソコンがあれば誰でも書けるはずなのに、「デジタルになって文章を書くのは簡単になりましたよね?」とは誰も言わない。なんで写真だけが「簡単に撮れるでしょう?」と言われてしまうのか。
岩崎 確かにiPhoneは進化していますよ。夜景を撮るにしても、最新のスマホは連写して画像を重ね、ノイズを消すことできれいな写真が撮影できるんです。パッと見は確かにきれいなんですけど、よく見ると合成している分、写真によっては違和感があります。
佐々木 無断使用者は、写真を作品として見ているのではなく、単なる素材としてしかとらえていませんよね。創作性や作家性を見ていない。iPhoneで撮っていようが、一眼レフで撮っていようが、見た目がきれいでスマホやタブレットレベルで遜色なければ関係ないんでしょうね。
有賀 よく「インターネットで拾った画像」っていわれますけど、落ち葉じゃないんだから“拾った”というのは何事かと思います。僕が無断使用者と交渉していて感じるのは、現場で実際に写真を撮ったり、創作性を出したりするための苦労がまったくわかっていないということ。まとめサイトなんて、本人は部屋の中でパソコンに向かって検索して記事を書き、写真を集めるだけ。それにそういう人は結構いい大学を出た、優秀な人が多いんです。