長嶋の晴れ姿は、長嶋のための時間だ。俺はここにいない方がいい。それは、勝者への敬意でもある。王に確かめたわけではないが、そんな思いがあったのではないだろうか。王貞治が普段から見せる“周囲への心配り”を考えれば、きっとそうだろう。

 あれから19年。

 以来、巨人ソフトバンクとの間で日本シリーズは戦われていない。つまり、平成の時代に「ON決戦」は、たった一度しかなかったというわけだ。

 2019年の日本シリーズは、平成から元号が変わって初の戦いとなる。王はソフトバンクの球団会長となり、長嶋は巨人の終身名誉監督を務めている。ここ5年間で4度の日本一に輝いたソフトバンク。一方の巨人は、広島から丸佳浩、メジャーから復帰の岩隈久志ら例年以上の大型補強を敢行して戦力充実を図り、覇権奪回を目指している。

 新時代の幕開けに、もう一度『ON決戦』を──。その可能性は十分にあるだろう。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。

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