見かけ上は「スマホでタクシーが呼べる」サービスに見えますが、やってくるのはタクシーではなく個人が運転するクルマ。最近では、同じ方向に向かう複数の人をAIでマッチングする乗り合い方式が、料金を抑えられると利用者に人気となりました。いま引っ越したら、おそらくマイカーを買わずに生活が成り立ったでしょう。
■新しい経済を生み出した
日本のケータイ文化から発祥した絵文字やモバイルアプリ消費は、米国の企業を通じて世界中で使われるようになりました。悔やまれるのは、日本がそのビジネスのプラットホームの担い手にはならなかったことです。
東京とサンフランシスコの双方で生活をしてみて気づいたことは、東京にはスマートフォン以前から、強靭なインフラが存在していた点。一方サンフランシスコ、シリコンバレーでは、スタートアップ企業が脆弱なインフラを補う問題解決を行うためのプラットホームとして、スマートフォンにすがったのです。
その結果、「なくてはならない存在」の色がよりこくなったスマートフォンに、ビジネスが集中しました。そして、米国のような社会インフラの脆弱さがむしろ世界のスタンダードで、スマホによる問題解決が世界中に広がり、AppleやGoogleといった米国企業にその富が集中したのです。
日本で生み出された非言語の絵文字は、今後100年以上、人類によって使われていくでしょう。一方、2010年ごろから短期的な急成長と覇権を握った米国のスマホビジネスも、経済史に残る出来事だったと思います。
筆者は優劣ではなく、どちらも非常に価値のあることだと思っていますし、あるいはビジネスモデル以上に、「現代人の共通文字を生み出した」ことを、もっと評価して良いのではないか、と思います。(松村太郎)