―思い切った方針に反発の声もあるのでは?
桑原 2011年に「科学忍者隊ガッチャマン」をもとにしたショートコメディー「おはよう忍者隊ガッチャマン」をテレビで放送したときは、オールドファンからお叱りの声をいただいたこともありました。もちろん、そうしたファンの方を裏切ることなく守るべきものは守ろうと考えています。もともと「ハクション大魔王」はギャグアニメですから、「ハクション大魔王やアクビちゃんが現在によみがえってYouTuberになったらどうなる?」と考えたときに、大胆な設定も「ありだな」と判断しました。
―守るべきものとは何ですか?
桑原 吉田竜夫が提唱していた「世界の子どもたちに夢を」の理念です。逆に言えば、その理念に反しないことであれば「なんでもあり」だと考えています。
―そうした「なんでもあり」の精神は社風でしょうか?
桑原 代表的な作品の原作の著作権をタツノコプロが所有していることが大きいと思います。そうした背景があるので、リメイクだろうが商品化だろうが自分たちの判断でなんでも決められて、素早く動くことができるんです。
―ご自身も子どものころに再放送された「ハクション大魔王」を見ていたそうですが、どんな印象をお持ちですか?
桑原 「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャ~ン」というセリフは流行語にもなり、まさに国民的なアニメでしたね。子どものころからキャラクターの魅力を肌で感じてきた一方で、実は大人になってからもタツノコプロの作品に大変な魅力を感じていたんです。私は弊社の前に日本テレビに勤めていましたが、そのころから「タツノコプロの作品は現代でも必ず輝くことができる」と注目していました。実際に、06年にはアクビちゃんを主人公にしたスピンオフ作品「アクビガール」が放送され、昔の「ハクション大魔王」を知らない女の子たちに受け入れられています。「科学忍者隊ガッチャマン」は13年に実写映画化もされました。それぞれの作品が時代に合わせてアップデートされ、新たな世代にも受け入れられていることが弊社の作品の大きな特徴だと考えています。
―そもそも主人公のハクション大魔王は、最初はムキムキの設定だったそうですね。
桑原 はい。吉田竜夫が描いた初めのハクション大魔王は、「アラジンと魔法のランプ」に出てくるようなマッチョな肉体だったそうです。それをアニメ総監督の笹川ひろしを中心に意見を出し合って愛嬌(あいきょう)を感じさせるデザインに変えていき、最終的に腹がたるんだ中年男のイメージになりました。