マーケティングという言葉も、とても多様な意味・内容を含んでいます。愛と同じように、こうと定義を一つにしてしまうとビジネスしにくくなるから、みんなが定義を曖昧なままにしているだけなのかもしれません。
マーケティングは日本発祥ではなくて、アメリカから来たコンセプトです。セールスのように営業とか販売といった日本語が当てられている言葉もありますが、マーケティングには日本語訳がありません。もう10年以上前のドラマですが、「ハケンの品格」(日本テレビ)で主演の篠原涼子さんが扮した主人公は、マーケティング部に配属されていました。ただ、彼女が働いていたのは、大きなメーカーの地方営業所の販促部隊。それがドラマの中で定義された「マーケティング」なんですよね。会社によってもマーケティングの定義はバラバラなのです。
マーケティングを販促・プロモーションと考える方もいますが、決してそうではありません。マーケティングはコミュニケーションだと考える人もいるので、宣伝部のことをマーケティング部と言っている会社もあります。ただ、宣伝はマーケティングの4P=Product(製品・商品)、Price(価格)、Promotion(プロモーション)、Place(流通)=の一つ、プロモーションの一部でしかありません。
僕の中では、マーケティングの和訳は「商売」です。要するに「売ること全部」がマーケティング。結局、誰にどういう価値を届けて、いくらくらいもらって、利益を出し続けていくか。それがマーケティングです。実はこのマーケティングの方向性がないと、じゃあ、どういう営業体制を作ろうとか、どんなインフラをつくろうとか、じつは設計できないわけですね。
経営戦略の前にあるのがマーケティングだと僕は考えています。それが最も広い意味でのマーケティング。なので「商売」という和訳がピッタリだと思うのです。
そんな総合的な仕事をするマーケターが成功するために大事なことは何か。いろんなやり方を知っておくという意味でマーケ本を読むことも必要だと思います。ただ、自ずと示唆されるのは「自分のマーケティングは、自分で考えましょう」というごく当たり前の結論だと思うし、「商売」というのは、結局そういうことだと思いますね。自分でつかむしかない「愛」と同じように、やはり正解があるわけではないのです。