──9条については憲法審査会などで議論をしないということでしょうか。
集団的自衛権を含む自衛隊の軍事的な公権力の行使については、正面から議論をすればいい。たとえば、2015年の安保法制の際に一部解禁された集団的自衛権を合憲化したいのなら、憲法9条に集団的自衛権が認められる条件を書いた案が出せばいい。そうすれば、日本の自衛権はどこまで認められるのかについて与野党で議論できます。ところが、自民党の素案ではそうなってはいません。憲法改正しても「今と何も変わらない」と説明しているだけですから。
一方で、自民党の改憲案の有力案では、当初は自衛隊の存在について「必要最小限度の実力組織」という文言がありましたが、最終案では「必要最小限度の」との文字が削除されました。この文言では、フルスペックの集団的自衛権を認められる可能性がありますが、自民党からはきちんとした説明がありません。自民党の中でも、自衛権の範囲についてちゃんと議論が行われていないのではないでしょうか。
私は、自民党の素案は「フルスペックの集団的自衛権の解禁」という安倍首相の本当の目的を隠した「ステルス改憲」だと考えています。
──国民民主党は、憲法改正をどのように考えているのですか。
私達は何でも反対する政党ではありません。だからこそ、野党の改憲案も議論していくことが必要ではないか。
我が党としては、国と地方の関係を憲法で明確に位置づけるべきだと考えています。中央集権の国家運営の弊害が出ているいま、地方自治の本旨に戻り、新しい国の形を作っていかなければならない。国と地方との関係を見直しは、これからの日本を変える大きなテーマで、こういった議論こそ憲法改正の国民投票にふさわしいと思います。
そのほか、現行憲法では衆参いずれかで4分の1の要望があれば内閣が臨時国会を召集することになっていますが、開会までの期限が定められていません。昨年の臨時国会では、安倍政権がこのことを利用して約3カ月も国会を開かず、さらに開会冒頭で衆院を解散しました。しかも、12年に発表された自民党の憲法改正草案では、臨時国会の開会の期限を「要求があった日から20日以内」としていましたが、今回の自民党素案では消えました。これもおかしなことです。