北海道全域で起きた大規模停電、ブラックアウトは日本で初めての事態だった。その原因の特定は9月21日から始まった第三者委員会の議論を待つとしても、大きな要因が苫東厚真発電所への過度な依存にあったことは指摘できる。いわゆる「選択と集中」が今回の停電で悪影響をもたらしたのだ。多くの経営者は口を開けば「選択と集中」という。だが新しい技術が次々と台頭する「大変革期」に「選択と集中」はとても危険な戦略と考えるべきなのではないか。
今回の北海道地震でのブラックアウトは発電量の急減に伴う強制停電(周波数を一定に保つために発電量の低下に見合う需要量に減らすための停電)が適切に実施されたかどうかなどを見極めないと、確かな原因はつかめないかもしれない。だが地震発生時、北海道の需要量310万キロワットのほぼ半数を苫東厚真発電所が担っていた。需要の半分を占める発電所がストップしたのだから、どこかの地域を強制停電させ、なんとか需要量を減らし、一方で他の発電所の発電量を短時間で増やそうというのは、相当、難しいオペレーションのように思える。第三者委員会の横山明彦・東京大学大学院教授は第1回会合後の記者会見で「今回の停電は需要と供給のバランスで説明できる」と述べ、急激な供給減が大きな要因であるとの認識を示したという(9月22日付日経新聞)。
第三者委員会の結論がどのようなものになるかは分からないが、今回の大きな教訓は苫東厚真発電所への過度な依存だったとは言えるだろう。発電コストの安い巨大な石炭発電所をベースロードとしてフル稼働させれば、発電コストは安くつく。経済性を考えれば、コストの安い発電所を選択し、そこで集中して発電するという「選択と集中」が北海道電力の経営戦略だったと言える。
平時には「選択と集中」は効果的だったかもしれないが、非常時には一つの発電所に依存するシステムのもろさが露呈した。だが今回のシステムのもろさは非常時だけのものだったかどうか。いまや太陽光発電などの再生可能エネルギーは増えつつある。再生可能エネルギーは分散型電源が多く、一極集中とは縁遠い。「選択と集中」が有効なのは巨大な原子力発電や火力発電を中心に据えたシステムだ。一方、長期の発電システムを考えると、再生可能エネルギーの増加は政府の長期見通しでさえ、見込んでいる。
日本のエネルギー政策に対して、今回のブラックアウトが与えてくれる教訓は「選択と集中」をベースにしたエネルギー政策の見直しなのではなかろうか。再生可能エネルギーには太陽光パネルのように昼間と夜間での発電量の差など不安定な面もある。風力発電にも不安定さはつきものだ。だがそうした欠点を新技術で補いつつ、分散型電源として活用し、非常時にも柔軟に対応できるエネルギーシステムの構築を目指すべきなのだ。