新井さん、ありがとう! (c)朝日新聞社
新井さん、ありがとう! (c)朝日新聞社

 2018年シーズンも終盤戦に差し掛かり、今季限りでユニフォームを脱ぐ選手に関する報道も増えてきた。そこで今回は、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、9月5日に引退を表明した広島・新井貴浩にまつわる“B級ニュース”を振り返ってもらった。

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 ルーキーイヤーの新井貴浩は、53試合に出場し、7本塁打を記録したが、1999年6月8日の阪神戦(大阪ドーム)で放ったプロ第2号は、微妙な当たりだったため、認定されるまでにひと悶着があった。

 1回表、広島は2番・木村拓也の先制ソロで1対0とした後、横山竜士の代打・新井が右越えに大飛球を打ち上げた。打球が跳ね返ってきたので、一度は三塁で止まった新井だったが、真鍋勝己二塁塁審がグルグル手を回すのを見て、大喜びで2点目のホームを踏んだ。2日前の中日戦で放ったプロ初アーチに続く2号である。

 直後、阪神・野村克也監督が「フェンスに当たっている」と抗議したが、「一度スタンドに入ってから跳ね返った」と却下され、「どんな目をしてるんや。メジャーみたいにビデオを入れないとあかんのと違うか」とボヤく羽目に。

 その意味では、ルーキー・新井のプロ2号は、野村監督とともに、11年後のビデオ判定導入に何パーセントかは貢献したことになる?

 ちなみに同年の新井は、9月14日のヤクルト戦(広島)で、ディアスの本塁打を左飛と見誤って一塁に戻ろうとした際に、打者走者に追い越され、本塁打取り消しの珍プレーも演じている。

 新井と退場処分。一見ご縁がなさそうな“珍事”が起きたのが、2003年6月5日の巨人戦(広島)。広島が6対5と逆転に成功した直後の9回、巨人は阿部慎之助の右前安打で、一塁走者・斉藤宜之が三塁を狙うが、ライト・木村拓也が好返球。サード・新井がスライディングしてくる斉藤の右足に両手でタッチしているのが、VTRにもハッキリ映っており、明らかにアウトだった。ところが、吉本文弘三塁塁審の判定は「セーフ!」。誤審に怒った新井は、同審判の胸を小突いて退場処分になってしまった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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