すぐに「2778÷3=926」と正確な答えを出せなくても、「だいたい3000円だから、1人当たり1000円くらいかな」と考えることができれば合格です。
「この『だいたいどのくらい』という“数感覚”が算数では非常に重要なのです」
こう強調するのは、前出の宮本先生。
「ときどき『33×55=16665』などと答案に書いて平然としている子がいます。筆算をするときに桁をずらして書いたのが原因のミスですが、数感覚さえあれば、40×60=2400なのだから、こんな大きな数字になるはずがないと答えが出た瞬間に気づくはずです」
では、どうすれば数感覚を身につけることができるのか。宮本さんは「数に親しむこと」と「暗算力の強化」の二つを挙げています。
1.数に親しむ
ふだんの生活の中で数字について考える機会をつくることが大切。最適なのは買い物で、「おつりの小銭を少なくするにはいくら払えばいい?」「この商品の30%引き後の価格はいくら?」などと子どもに問いかけてみましょう。
2.暗算力をつける
暗算力では、頭の中で数字をイメージし、短い時間でいいので記憶しておけるかどうかが重要になる。高学年以降、何段階も計算を繰り返して答えを導く問題が増えてくると、特にこの力が重要になるので、早めに伸ばしておきたいもの。
また、その両方の要素を満たす「補数」の感覚を身に付けることも大切と宮本先生は指摘します。
補数とは、ある数字に足すとちょうどキリのよい数字になる数のこと。例えば、100の補数なら、1+99=100、38+62=100などです。
また、冒頭の2778円をだいたい3000円と見積もったり、「40×60」の計算結果から「33×55」の答えがどのくらいになりそうか予測したりするのも補数を応用した考え方です。
「できれば、補数はその都度計算するのではなく、九九を覚えるように暗記してしまうのが理想です。100までの補数が瞬時に出てくるようになれば、計算は格段に速く正確になりますし、計算ミスも目に見えて減っていくはずです。」(宮本先生)
さらに宮本先生は、例えば、100の補数がパッと出てくるようになると、652-593=652-600+7=59のように分解して計算することも可能になり、桁の大きい引き算も暗算で解くことができるようになるといいます。
『AERA with Kids 秋号』では、そんな補数感覚を磨く「補数カード」を付録に付けています。遊び方もいろいろ紹介しているので、親子で遊びながら計算力をつけてみてはいかがでしょうか?