小児科医であり、発達脳科学者として子育て支援事業「子育て科学アクシス」の代表でもある成田奈緒子さん。AERAムック『偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2024』(朝日新聞出版)では、多くの親子の相談を受けてきた経験をもとに、中学受験の意義と、保護者が果たすべき役割について語っていただきました。

MENU 子どもが中学受験を判断するのは脳の発達から見ても難しいこと 成績よりも心身を見てあげて回り道でも信頼関係を築こう

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 多くの悩める親子の相談に乗ってきた成田奈緒子さん。保護者自身が高学歴だったり、学歴にコンプレックスがあったりするがゆえに「学歴偏重主義」に陥るリスクについて警鐘を鳴らしている。また、「何がなんでもわが子を難関校に入れようとする保護者の行動が原因で、子どもが心身のバランスを崩したり、親子関係に亀裂が入ったりすることさえあるのです」と指摘する。

「校風や学校の個性がわが子に合う学校を選べれば、有意義な中高6年間を過ごせることは疑いの余地がありません」とメリットについても言及する成田さん。だが一方で、受験を乗り越えて入った学校でも、子どもが「こんなはずじゃなかった」と感じて不適応を起こすケースもあると言う。

「保護者が偏差値だけで選んだ学校に合格させたとしても、実際に学校に通うのは子ども自身なのです。オープンキャンパスに一緒に行ったり、子どもとしっかり話したりして、わが子との相性を第一に考えてあげてほしいですね」

 脳科学的見地から子どもの成長を見てみよう。0~5歳では、まず土台となる「からだの脳」ができる。少し遅れて1~18歳にスポーツや勉強をつかさどる「人間の脳」が、次に「心の脳」が育ってくるという。

子どもが中学受験を判断するのは脳の発達から見ても難しいこと

「心の脳は、論理的思考と問題解決能力をつかさどる部分なのですが、ここは10~18歳ごろに発達します。つまり、中学受験期はそうした力が未熟な段階だということ。失敗も挫折もあって当然なのだと割り切っておくことが不可欠です」

 子ども自身が「中学受験をしたい」「この学校に行きたい」と希望したとしても、その意思がどれだけ論理的に確立されているかを考えると、大人の意見と同様に扱うわけにもいかないという。

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AERA dot.編集部
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