緊急事態宣言の解除で、いよいよ登校や登園が再開される見通しとなった。しかし、学校側にとっては手放しで喜ぶわけにはいかないのが現状だ。登校間隔をどう設定するか、教室内の消毒はどうやって行うのか、授業の遅れをどう挽回するか、問題は山積みである。そして、もし「第2波」「第3波」が発生してまた休校せざるを得ない状況になったとき、子どもたちは学びを継続することができるのか……。早々に全ての授業をオンライン化した学習塾「花まる学習会」の例を取材した。

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「花まるの全コースをオンライン化する、と決意したのは2月末から3月頭頃だったと思います」

 そう振り返るのは、花まる学習会代表の高濱正伸さん。

 最初のうちは「正体不明のウイルスといっても風邪のひとつ?」ぐらいに思っていたというが、知り合いの専門家の情報を収集し、「いや、今回のはただものじゃないぞ」「一回おさまったように見えても、2波、3波がくるかもしれない」と予測を立て、「最悪の状態に備えよう」と決心したという。

 すぐさま全社員に号令をかけ、システムづくり、オンラインでの教材開発に取り掛かり、全コースのオンライン化がスタートしたのは4月中旬。実質の準備期間は2~3週間というスピード感だった。                                                
 とはいえ、もともと授業では先生と子どもとの濃密な関係性が特徴の「花まる学習会」。いつもの授業を単にオンラインに乗せればいい、というわけにはいかない。

「子どもたちがふだん見ているのはYouTuberの動画ですからね。面白くない動画を流したらいっぺんで飽きられる。その上で、動画を見たあとに『ハイ、終わり』とすぐゲームをしたら親御さんたちは納得しない。動画を見たあとに子どもの行動が変わる。そこまで我々が保証しないと、という思いはありました。そして、何よりもコミュニケーション。子どもひとりひとりに対して、『認める」『構う』『気にしている』という関係性をオンラインでも築くことが大事だと思いました」(高濱さん)

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AERA編集部
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