もう一つは、スケジューリングです。学校では意識せずとも、学びがスケジューリングされています。教室に入れば勉強モードになりますし、チャイムが鳴ればスタートです。しかし、家にいたらそれがありません。ですから家では、親が意識的にスケジュールを作ることが大切です。

 子どもの集中力は長くはもちませんから、例えば「15分勉強をしたら、5分好きなことをしていい」というように時間を決めます。これは脳科学にも見合った方法です。周りからの強制力がないため、このように学校よりもかなり細かいスケジュールを組んだほうがうまくいきます。

 オンライン教育自体は、単なるツールでしかありません。教材の中身やその方法を議論するのと同様に大切なのは、受講する側の環境を整えることです。学校という場で子どもたちが持っていたコミュニティーとスケジュールを、家においても整えてあげることなので す。その上で、オンライン教育というツールを使った解決策を見つけていかなくてはいけません。

 私は「教育ではなく、学育を」と皆さんにお伝えしています。「教え育てるのではなく、学び育つのをサポートする」ということです。オンライン授業が充実してくれば、自分に必要なもの、好きなものを自由に選べるようになります。その選択肢を子どもに示すために親ができることは、さまざまな親同士のネットワークに加入し、生の情報を得ることです。学校、塾、習い事などで多くの親たちとつながっておきましょう。また、日本の教育の良さもしっかり見直してください。なぜなら日本の教育は、平均的に素晴らしく、特に理系分野には特筆すべきものがあります。アメリカの教育学会などで「日本の小中学校の算数」について発表されるほどです。

 これまでは、学校が提供する学びを受け取るだけで十分だったのが、これからは情報を手に入れ、その中から自分に合った学びを選び組み立てていく時代となります。「社会と理科は学校で勉強して、英語とリーダーシップはオンライン。国語はこっち、数学はあっちの予備校で」といったように、音楽でプレイリストを作るかのように、自分の学びをデザインする時代が目の前まで迫っています。お子さんが自分だけの学びのプレイリストを持てば、 より深く、楽しく学べるようになります。そしてそれは学んでいく生徒の側に自分の学びをデザインする主体性が求められていきます。親御さんはそうした子どもの学ぶ主体性をサポートする「学育」の精神で子どもと向かい合っていくべきでしょう。(取材・文=黒坂真由子)

AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2020年 秋号 [雑誌]

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黒坂真由子
黒坂真由子

編集者・ライター。中央大学を卒業後、出版社勤務をへて、フリーランスに。主に教育や子育ての記事を執筆。絵本作家せなけいこ氏の編集担当も務める。日経ビジネス電子版にて「もっと教えて! 発達障害のリアル」を連載。著書に『発達障害大全』(日経BP)などがある。

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