さまざまな価値観が変化した今年。「集団」よりも「個」が尊重される時代になり、子育てにおいても、「子どもには『自分の好きなこと』を見つけてそれを伸ばしていってほしい」と多くの親が考えるようになっています。『AERA with Kids冬号』(朝日新聞出版)では、そのためにはどうしたらいいかを各方面に取材しています。まずは、先進的な会社運営が何かと話題のサイボウズ代表取締役社長、青野慶久さんにインタビュー。

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 今年は「集まってはいけない」という新しいルールができたことで、働き方が大きく変わりました。初めてテレワークを経験した方も多かったはずです。「出勤しなくても働ける」「むしろ家で働いた方が生産性が高い」ということに気付いた方もいるかもしれません。

 これはマネジメントする側も同じです。「どうやってマネジメントをしたらいいのだろう?」と悩んでいた人が、「やってみたら意外とできる」とわかった。オンラインであれば、時間と場所の制約がないので、ミーティングの回数も増やせる、組織の生産性も上がる、ということがわかり始めたのです。

 働き方が変われば、評価の軸も変わります。「会社で長時間働く人」ではなく、厳密に個人の能力が評価されるようになります。

 そもそも時代の変化もあります。大量生産、大量消費という構造では、もはやインドや中国に勝てませんから、日本はもっとクリエーティブにモノやサービスを創造していかねばなりません。そのためには、どうすればいいか。

 答えのひとつは、「働く人自身が人生を満喫していること」です。

 これは社会の大きな変化です。つまり、個人の幸せを犠牲にしてガリガリ働くよりも、「個人の幸福を追求した方が、組織の生産性が上がる」ということが、明らかになってきたということです。子どもはもちろん、大人であっても、自分自身が没頭できるもの、好きなものを見つけ、人生を楽しまなくては他人がワクワクするような価値を生むことはできない、ということなのです。

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黒坂真由子
黒坂真由子

編集者・ライター。中央大学を卒業後、出版社勤務をへて、フリーランスに。主に教育や子育ての記事を執筆。絵本作家せなけいこ氏の編集担当も務める。日経ビジネス電子版にて「もっと教えて! 発達障害のリアル」を連載。著書に『発達障害大全』(日経BP)などがある。

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