婚活、妊活、保活……というように。最後は終活というのもあります。

 そういえば、最近は「ラン活」というものもありますね。「ラン活」ってなんだかわかりますか? 「小学校の入学を控えた子どものベストなランドセルを勝ち取るための活動」です(笑)。もう子どもが3、4歳ごろから「ラン活」をしているご家庭もある。

 実は現代の我々は、今を楽しむことよりも、「あとで困らないための準備」を優先する「保険的で逆算的な生き方」がスタンダードになっているんですね。

 でも実際は、最初にお話ししたように、技術の進歩により社会の価値観は確実に変わりつつありますし、また予測不可能なことがたくさん起こるわけです。

 そういった「逆算的な学び方」は他にも問題があって、学んでいる本人が楽しくない、ワクワクしない、と思っている場合が多い。

 先生たちもいつもカリキュラムに追われていたり、生徒がつまらなさそう、本当はやりたい授業をやる時間がない、などの問題を抱えていたりする。

 それに「いま」を犠牲に学んでも、実は誰も将来を保証はしてくれない。必ず予測したとおりになる将来なんてないわけですから。

「探究的な学び」というのは、いま、目の前にあることに集中して考える学びでもあるんです。「いま」にフォーカスして、受験を含めた全ての経験を「成長のプロセス」として捉え直す。ここが「逆算的な学び」と大きく違うところです。

「生きる力」をつけるためには、想定された未来へ向かう適合的、かつ予定調和の能力から、不確実な社会を生き抜く創造的で抽象的な能力へのチェンジが必要です。

 そのためには、抽象的にものごとをとらえる力や、マニュアルにない事態に臨機応変に対応する力が必要になってくるんです。これらの力を、用意された模範解答を正確に答えるような従来型の学びの中で身につけることは難しい。だから、それらの力を鍛えることができる「探究的な学び」に注目が集まっているわけです。

(構成/教育エディター・江口祐子)

○矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。幅広い知識と豊富な指導経験から教育界からの信頼も厚い。教育者こそパラレルキャリアであるべき、が持論。

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