失敗こそが生きるヒントになる
――本来は、どんな学習方法が望まれますか。
知識は、自分がより広く深く考えるためには不可欠です。一方で、身の回りの現象のなかで子どもがみずからテーマ(課題)を見つけ、どう解決するかを考え、実験して失敗して、その失敗を生かしてまた考えて……と、探究していくことはもっと重要です。
子どもが一生懸命考えても、実際に実験や観察をすると、だいたい失敗します。ですが、「失敗」は解決のためのたくさんのヒントをくれます。そのヒントの見つけ方を身につけると、失敗しても面白い、諦めない、ヒントを元に前に進もうという見通しができます。それは生きていく力になると思います。
自ら探究していく面白さがわかれば、いずれ今の社会のどこが課題かを見つけることができるようになりますし、その課題をどうしたら変えられるか考えられるようになります。ただ、今の学校教育には、「探究」していく時間も余裕もないように感じます。
――滝川さんなら、「理科が生活に根づいている」ということを伝えるために、どんな授業をされますか。
例えば、モノに力が加わると、その力に応じて加速します。加速度の大きさaは、力の大きさFに比例し、物体の質量mに反比例する「運動の法則F=ma」という公式があります。
私は以前、高校でこれを題材に「実際にあるモノを例に、そのモノの質量が大きくなった場合、加速度はどのように変化するかを考えなさい」という課題を出したことがあります。
ある高校生は、「木の幹は太いから質量が大きく風には揺れにくいが、枝は細くて軽いので揺れやすく揺れ幅も大きい」と考えました。ほかの生徒は、「同じモーターの電車でも、電車の素材をアルミに変えたら質量が軽くなり、加速度が大きくなる」というものでした。生徒が身の回りのなかから見つけたたくさんの事例をほかの生徒と共有するようにしました。単元の最後にはいつもこういった課題を出していました。
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