理想の学校をつくるために東大入学を決意

――マンガ漬けだった少年が、どうやって東大に向かったのか気になります。

 中学入学と同時に、ドイツに引っ越したことが転機になりました。現地の日本人学校は、生徒25人に対して先生が15人という手厚いサポートのある環境。ところが先生の目がよく行き届くがゆえに、話をじっと聞くのが苦手な僕は、「姿勢を正しなさい」なんてことまで注意されていたんですよね。おまけに「こんなふうにテスト勉強をしましょう」なんてアドバイスにも息苦しさを感じて、居心地がよくありませんでした。

 でもその手厚さって、教育環境としては理想的じゃないですか。一方で、あれが理想的だとしたら、息苦しさを感じる自分はどうなるんだろうと感じたんです。

 だったら、自分が「これが理想」だと思える学校をつくろう。そのためには、まず知識を身につけること、そして教育が成功したとされる人々がどんなふうに育ってきたかを知る必要があるな。そんな考えが、ふっと湧いてきたわけです。

――そこで「東大に行こう」……と?

 そうです。ただ、中学時代の僕の成績はクラス11人中の4番。東大に入れるのは400人に1人という割合を考えると、箸にも棒にもかかっていないわけです。となると、普通に勉強していたのでは間に合わない。そこで、高校には行かず、高卒の資格を得るために通信制高校に籍を置いて、独学するという選択をしました。

 なぜって、高校に行って先生の話を聞くより、自分で読んで学んだほうが効率的じゃないですか。それに、東大に行くという目標をかなえるには、文化祭に情熱を注いだり、恋愛したりする時間はないと思ったんです。

――勇気ある決断ですね。親御さんは反対しなかったのでしょうか。

 僕にしてみれば、いくつも同時にこなす環境に飛び込むほうが、むしろ勇気があると思うんですよね(笑)。親も最初は驚いていたものの、とことん話し合った結果、理解して応援してくれました。ただ、通信制の学校にネガティブなイメージを持っている人もいるので、母はママ友から「気を落とさないで頑張って」となぐさめられたそうです(笑)。

1年目はゲーム漬けで偏差値45まで急落

――勉強はうまくいきましたか?

 中学時代は生徒会長をやって部活にも力を入れて、学校生活を楽しんでいたので、それがいきなりなくなってしまったんです。しかも「これで受からなかったらやばい」というプレッシャーのストレスから、1年目はゲーム漬けの毎日。そのことでまた、自己嫌悪に陥る日々でした。

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