知らず知らずのうちにプレッシャーをかけている?
安浪:弟さん本人は、お母さんの様子を見てどう感じていたんですか?
矢萩:意外と本人はのほほんとしていました。お兄ちゃんと比べて卑屈になっているようには見えませんでしたね。ただ、お母さん一人がすごく悩んでいるような印象でした。

安浪:今回のご質問者さんの場合は、弟さん本人もプレッシャーを感じていると書かれていますが、それはきっと、親御さん自身も知らず知らずのうちにプレッシャーをかけてしまっているからではないか、と思います。
矢萩:実は先日、受験が終わったそのお母さんと話をしたのですが、「お兄ちゃんは最難関校に行ったけれど、順風満帆というわけではなく、家族との関係もあまりうまくいっていない。弟は家族とも友達とも関係が良好で、どっちがよかったのかわからなくなってきました」とおっしゃっていました。
安浪:受験が終わってようやく気づいたんですね。今回の質問者さんも「比較しないように気をつけている」と書いていらっしゃいますが、本当にそのとおりで、比較するような言動はとにかく避ける。先ほども言いましたが、とにかく下の子の良いところを意識的に見つけて、どんどん褒めていく。それに尽きると思います。
矢萩:偏差値が高い学校に通っているからといって、その人の人格が優れているわけではありませんからね。
安浪:せっかくお兄ちゃんが最難関校に行っているなら、「ここがわからないから教えて」と頼ってみるのもいいと思いますよ。そうすれば兄弟間の関係ももっと良くなると思います。
矢萩:そうですね。親が気をつかって「勉強ができなくても気にしなくていいんだよ」などと声をかけても、本心からそう思っていないと、子どもにはすぐに伝わってしまいます。本心から思っていないのに取り繕うような言動をすると、逆に「比べられている」と感じてしまうかもしれません。
安浪:以前、私のVoicyに「上の子は苦労せず最難関に行ったのに、下の子は全然違っていて……」というご相談が寄せられました。でもその方が、「下の子を見て初めて、上の子はレアケースだったとわかりました」とおっしゃっていて。同じ家庭に生まれた兄弟でも、性格も能力もまったく違って当然ですよね。
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