この一件から、自分でもよくわからなかったモヤモヤの正体がやっと明確になりました。

 私はただ、「知っていてほしかった」んだって。

 乳児期の母親がたった一人で、愛情だけをパワーに日々小さな命を守り育てているワンオペ子育ての実態って“誰も知らない”んです。お世話されていた子ども自身は当然記憶にありません。物心ついてからお父さんにキャッチボールしてもらったり休日に一緒にカレーを作ったりした記憶は鮮明に残っているのに。夫も、実は知っているようで知らないの。なぜなら彼が家の中にいる時は手が4本、戦力は二倍。私が頭も顔も目もかっ開いて子の安全を確認しながら洗い、ずぶ濡れの全裸で赤子を抱いて右往左往している孤独で壮絶な姿を見た事がないのです。

 決して見返りを求めていたわけではない。文字通り無償の愛なんだけど、それに気づいた時、ただただとても悲しい気持ちになってしまったんです。

 当時、私は次男が生まれる頃から日々のカオスな状況を絵日記に残し、SNSに投稿することを始めました。毎日怒涛のようにハプニングが起こり、落ち込むことも荒れ狂うこともあるけれど、絵に描いてみるなんだかクスっと笑えてくる。そんな内容が頑張っているお母さんに届き、共感してもらったことは私の孤独を和らげてくれました。どこかの知らないお母さんたちと毎晩肩をたたき合い讃え合っているような満足感を得られた次男の子育てからは、夫の忙しさは変わらずでも長男の時に比べずいぶん楽な気持ちになっていたと思います。

 でも第一子の頃の苦しみがそれでチャラになるわけでもないんですよね。今更夫にどうして欲しいことも無いけれど。過去に戻れたとて、当時あれ以上求めることはできなかったし。

 夫に改めてこの話をしたところ、腑に落ちた顔で「なるほど」と静かにうなずいていました。「今更ごめんもありがとうも意味無いと思うけど、よくわかった」と。それだけで、私もスーッと心の引っ掛かりが取れたような気持ちになりました。

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