「一緒に」というスタンスで、まずは親から実践を

 旅育がうまくいかない要因に、親が「子どもに学ばせる」という意識が強いケースがあります。ほとんどは子どものことを思ってではあるものの、「~させる」というのは上からの目線。子どもを仲間と考えるなら「一緒に」というスタンスがいいでしょう。子どもにとって親は身近なロールモデルで、行動を観察し、まねや模倣をしたがるもの。親が様々なものに興味を持ち楽しみながら学べば、自然と子どもも「楽しそう! 何だろう?」と興味を持ち、積極的に取り組むようになります。

 仲間として「一緒に」という意図では、親子で初めてのことにチャレンジするのもおすすめです。親子ともゼロベースでのスタートであり、同じ目的に向けて互いにアドバイスをしたり助け合ったり、時に子どものほうがうまくできることも少なくありません。同じ目線でがんばることで、子どもとも自然と対等な関係が生まれ、絆も深まります。

「子どものために……」をやめて、自分の意見を伝える

「子どものために……」と考え親が予定や行動を決める、あるいは「子どもを優先し親は我慢をする」ということも家族旅行ではよくあること。でも、子どもの立場から考えると、「自分が望んだわけではないのに勝手に決められた」と反抗的な気持ちになったり、あるいは「親が我慢している」ことを些細な言動から感じ申し訳ない気持ちになったり。親子の思いにすれ違いが生じることも少なくありません。

 旅仲間と考えることで、親子それぞれが自分の思いや希望を伝え、互いを尊重したうえで、「どうするか?」を皆で考え決めるのが常になります。「子どものために……」という思いがあるのなら、「パパ(ママ)は、〇〇さんとこれをしたい」「〇〇さんがこれをしてくれるとうれしい」というように、自分を主語に親が伝えれば、子どもは自ら考え答えを出すでしょう。目線をそろえてコミュニケーションをすると、親が想像していた以上に子どもはしっかりと物事を考え判断できることに気がつくことも多くあります。

 家の外の世界では、行動を示したり、自分を最優先してくれる環境は望めません。親子が仲間として接することは、子どものコミュニケーション力や考える力を高め、社会性を身につけるための練習にもなります。

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