――個性豊かな登場人物たちは想像でつくるんですか? モデルはいるのですか?
私が想像でつくれる人間なんてたかが知れています。きっと典型的なキャラクターしか出てこないと思います。
だから、取材はします。かるた部に取材に行ったときには「ここで一番の変人はだれ?」って必ず聞きます。「かわったクセがある子は?」とか「座右の銘は?」とか。
人と出会えば出会うほど、人のヘンテコな部分が見えてくるんです。それが大好きで「ヘンテココレクター」になっています(笑)。
そのヘンテコな要素をミックスしてできたのが、「ちはやふる」の登場人物たちです。
よく「そんな子いる?」って言われますが、実際に出会っちゃったんだからしかたがない。マンガを読む子たちにも、そんな色とりどりの子に出会ってほしいですね。
親に応援されない子たちでも、部活動をしてほしい
――現在『ちはやふる』の続編、『ちはやふる Plus きみがため』がスタートしています。千早が卒業したあとの瑞沢高校かるた部が舞台ですが、続編の主人公は千早たちとは違い、家庭環境に恵まれていませんよね。
そうですね。主人公・凛月(りつ)くんはお母さんを亡くして、小学生の妹の世話をしながらかるたをしています。友だちの千隼くんの母親は、わが子の自由を認めません。
前作『ちはやふる』の主人公たちは、わが子を全力で応援してくれる家庭で育ち、金銭面でも不安なく競技に打ち込めました。恵まれている子たちです。でも現実には、部活動に打ち込める環境にない子たちだってたくさんいます。
当たり前ですけど、高校生は親がいて家族がいる。その影響はものすごく大きいはずなのに、前作ではそこまで描けなかった。だから今回はその部分も厚く描けたらいいな、と考えています。
――家庭環境に焦点を当てたのはどうしてですか?
家庭がキツイ子ほど、部活動をしてほしいと私は願っているんです。逃げ出したくなるような家庭であれば、なおさら部活でいろんな人に出会うことってすごく大事。そうでなければ、すぐに八方ふさがりになっちゃうから。
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