わが家でも一時期、夫の知り合いで、自宅にいられなくなった子を預かったことがありました。大したことはできないけれど、逃げ場になるくらいはできるよ、と。

 その子の家庭もかなりキツイ状況だったんだけど、部活をなんとかがんばっていて、だから私たちともつながれたんです。家庭以外の場所があるって、とても大切です。

「ななめの関係」で子どもたちを見守っていきたい

――『ちはやふる』の登場人物の多くは、地元のかるた会に参加していますね。社会人や大学生たちと触れ合い、さまざまな学びを得る姿が印象的です。

 かるたって、サッカーや野球みたいに放っておいても人数が増える競技じゃないので、かるたを始めた子たちをみんなで応援する傾向があります。遠征費をサポートしたり、はかまを貸したり。

 でもそれは、大人たちがポケットマネーで支えているわけです。それじゃ長続きしないと思って、2020年に「ちはやふる基金」を創設しました。競技かるたにお世話になった私が、何かかるたに恩返しできたら……と思って。

――親でもなく、先生でもない大人とのかかわりを「ななめの関係」と言いますが、そういう関係は作りにくいものです。

 そうですね。でも、つくって行くことはできると思います。それを実践しているのが、うちの夫なんです。

 彼は子どもの学習に携わっていた人で、勉強が得意。教育にかかわる仕事をしていたこともあり、わが子だけでなく地域の子どもも可能な限り見守ろう、子どもからのSOSがあればいつでも駆けつける覚悟がある、という感じです。

――地域の子どもを見守る? それは具体的にどういうことですか。

 たとえばPTAです。うちは子どもが4人いるので、小学校の保護者としてはもうすぐ丸8年になります。

 夫はその間、ほぼずっとPTAの役員をしているんです。会長さんは別の方がやるんですが、夫はずっと副会長。小学校ではちょっとした有名人かもしれませんね(笑)。

 夫が言うには、「PTAって、1年だけやっても何も変えられない。うちは小学校に12年在籍するわけだから、長い目でPTAを改革できると思うんだ」と。ものすごく前向きなんです。

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