おすすめポイント

 秋から冬、そして春の気配へと、うつっていく季節の描写が魅力的。文を書いているのは、ロングセラー絵本『くまとやまねこ』や小説『夏の庭』などで人気の作家、湯本香樹実さんです。

 画家・堀川理万子さんが描くきつねは、いたずらをする憎らしい顔も、情けない顔も、ニヤッと笑いたくなるほど表情豊か。カラーページが多く、ユーモアたっぷりのイラストがお話を引き立てます。

 元気になったきつねは、小さな動物たちを追いかけ回したり、落とし穴を掘ったり。困った森の住人たちの話し合いの席で、たぬきのおじさんが「えー、みなさん。このさい、あのきつねを『きつねじる』にしてしまうのはどうですかな」と言い出しますが、みんな「はんたい!」と叫びます。迷惑をかけられても、森のみんなは若いきつねを心配しているのです。

『きつねのスケート』(ゆもとかずみ 文/ほりかわりまこ 絵/徳間書店 刊)

 自分の気持ちを持て余して乱暴にふるまうきつねと、優しい野ねずみの友情が深まっていく日々が、季節のうつりかわりとともに綴られます。

「あと二かい、お月さまがまんまるになったら、みずうみのむこうに、きっといけるよ」という野ねずみの言葉どおり、ついに2回目の満月をむかえた冬の日、きつねは、森のみんなが作ってくれたスケートぐつで、広い氷にすべり出します。旅立つきつねのわくわくする姿と、見送るねずみの姿が切なく、両方の気持ちが伝わってくるのがポイントです。

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